ゲームブック(十四頁目)

「アロロさん、俺たちのパーティに入りませんか?」


「なんでだよ」


すかさずノブがツッコんだ。


「いや、お誘いは有難いが、私にはこの街を守護する役目がある故」


「ですよね」


そりゃそうか、そもそもアロロは街のNPCだ無理がある。ちらりと、暇だという戦士達に目をやるが……いつの間にか女の子は居なくなっていた。


「あれ?」


「彼女ならば、何処かに出かけたようですよ」


片目を瞑りながら、山本さんがそう教えてくれる、オシャレのつもりだろうか。


「あ、そうですか、彼女も戦士なんですね。あんなに小さいのに」


完全に小学生だったよな。


「侮れませんよ、彼女はあれでガーディアンという上級職なのですから」


へぇと相槌を打つ。ここではクラスとレベルによって強力なバックアップがかかる。大人と子供の体格差など、本当に関係無いのだろう。


「それで私に何か御用ですかな?」


あー……


「山本さん、俺たちのパーティに入りませんか?実は二階の攻略に行きたいんですが、戦力が足りなくて」


この侍は即答せず、ふむ、などと言いながらこちらを眺める。


「いや、旅に出るにはいくらか準備が要りますので。明日、お返事するのでは如何でしょうか」


「わかりました、では明日正午に月白の葡萄亭でお待ちしていますので」


「承知しました」



……



山本さんを誘う話が済んだので、俺たちは散策デートに、ノブは一人酒を呑みにと解散した。


「どうなるかなぁ、前衛がもう一人居ると心強いよね」


うんと頷きながら彼女は答えた。


「でも山本さんってちょっと怖くない?」


「……うん、まぁ。でも戦闘以外では割と真面目そうだけど」


「目がなぁー目が笑って無いんだよねー」


居ないのを良い事に、ひどい言い様である。割とこの人は、ずけずけとモノを言う。

陰口だけでなくて、本人にも直接言っちゃうのが憎めないトコロなのだが。


どこで夕飯まで時間を潰そうか、なんて考えて居ると、前から二人組の女性が声をかけてきた。


「すみません、魔法使いのさやさんですよね?」


「えっ、と?」


すーっとさやが俺の後ろに隠れる。


「あ、わたし達はさやさんにお話があって」


「はぁ」


「さやさん、この世界に来て魔法を使えて、すごく良かった思いませんか?」


「え、まぁ」


「そうですよね。さやさん程の大魔法使いなら、そう思うと思いますよ」


「いや……大魔法使いなんて」


「もっと魔法の事を深く知りたいと思いませんか?」


「それは……そうかな」


「魔法って凄く神秘的な力なんです。実は、わたし達はそれを研究しているんですよ。さやさんも興味ありますよね?」


「……ぅ」


交互に話を続ける彼女らのペースについて行けず、押されていくさや。


「ねぇ一回だけでも良いから、わたし達の集会に出て欲しいの。みんな、さやさんだったら凄く歓迎するわ」


なんだか嫌な予感しかしない。


「ここに集会の場所と時間が載っているから、是非一度来て欲しいの。こんな事は他の人には全く進めないのよ、さやさんだからこそ言ってるの、魔法の研究は幸福の追求でもあるんだから」


「ぁ、ども、じゃあそのチラシだけ貰います……」


うんうんと頷いて、チラシを手渡す。そして、がっしりと手を握っている。


「絶対来てね。わたし達は同士、さやさんが来てくれるのを待って居るわ」


「……」


「……」


去っていく二人組の背中を見送る、なんだか凄い勢いだったな。


「今のは」


「たまに、勧誘されるんだよね。多分、魔術師組合」


へぇと相槌を打ちながら考える、俺にはスカウト来てないぞ。魔法剣士組合とかは無いのか……?いや別に良いんだけど、ちょっとさみしい。


「やっぱり、有名人になっちゃったかなあー?ゴブリン事件で!」


「そうかもね」


そんな他愛もない話をしながら、ぶらぶらと家路に着いたのだった。

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