群緑師団3

 ソール・オムナス宮、アニムが自室として使用している居室。

 すでに彼が玉座で目覚め、2月ほどの時を経ていた。

 

 今、アニムは椅子に座り、クニシラセを眺めている。


 この頃のアニムは、召喚したユニット達に対して、愛情の様な物を抱き始めていた。

 始めは違和感や、困惑、はたまた疑念や恐怖の方が強かった。


 ただ、アニムがこのEOEというカードゲームを始めたのは、最近のカードゲームにしては珍しく油絵の様な、そのまま動き出しそうな、妙にリアルなタッチで描かれた絵柄が好きだったからである。

 日本に居た頃は、よく召喚したユニット達が、かっこよく戦う所を想像しながらカードを眺めていたのだ。

 その様な彼らが、現実の存在となり、アニムを慕ってくれている。

 それが、とても嬉しく、また、ゲームならともかく、現実で王様をやるなど、本来なら、とうに投げ出してしまっている。

 しかし、必要とされていると思えば、応えたいと思う気持ちが湧いてくるものだ。

 未だにアニムが王で居続けるのは彼等達が、”そう”望むからであった。

  




 現在、手持ちの手札には様々なカードがあり、どれを取ってもアニムには馴染みのあるカード達だ。

 

 (そういえば、十分にマナがあるから忘れてたけど……。この土地カード達は使えるのか……?)

 

 ふと、アニムは疑問を持ち、手札の土地カードをピックアップした。

 手札に現在ある土地カードは湖(水)、森(土)の二枚である。


 白磁世界の頃とは違い、現在、領域周りにも、北には森林地帯があり、西には平原があり、東と南は海洋が広がっていた。

 

 


 普通、EOEは8マナもあればゲームは最終盤であり、一部の例外を除いて、殆どのカードは、それ以内に収まる様にデザインされていた。

 故に、現在10マナ以上ものマナが、毎日産出されている状況であり、アニムはあまり気にしていなかったのだ。

 アニムは「湖」をタップする。

 ハニカム構造で区切られたマップ画面上、一部が明滅をしはじめた。


「お?」

 

 具体的には、現在のミコ・サルウェ領内、そして探索部隊が踏破し、雲が晴れた場所である。


 「なるほどね……。ソール・オムナス(城+城)とか、フレーメンの地下墓地・ヒエメス(地底湖畔+墓地)とかいう表記なのは、そういう事か……。これは記憶になかったな。」


 既存の土地に、さらなる土地を重ねる事で、その土地を強化することが出来るようだ。

 そして現在あるのは、白磁世界において自分が行ったその名残なのだろう。

 

 「では。ミコ・サルウェの領域外の土地であればどうなるかな?」


 これは、ゲームという物を愛していたアニムの勘でしかない。

 しかし、半ば以上の確信を持って、ベスティア達の居る森に「湖」のカードを使用した。


 

 ------この場所に増資しますか?  yes/no


→yes



 ラピリスの森林湖畔(土+水)G:40 食料:100 活力+1 「ミコ・サルウェ領」



「そうなんだろうな。」


 アニムは少し楽しそうに眉根を開いた。

 名前がどういった法則で決まっているかは、アニムには不明である。

 しかし、結果として、未所属領域であった土地がミコ・サルウェ領に編入された。


「流石にすでに他の国の物となっている領地では、こういかないんだろうけどな……。別に今のところ進んで、戦争するつもりはないし……。戦争して土地を奪うより、土地カード一枚だして領地が増えるなら、そっちの方がコスト的には全然、安くつくってのは……。まあ、この手のセオリーだな。もうマナは十分出るけど、資源とか考えると、ある程度、国境線が確定するまでは、積極的に土地を出していった方がいいか……。」


 

 その時、クニシラセにメッセージが届いた。

 アニムは、メッセージを一瞥し、眉根を寄せて苦い笑いをこぼした。


「あ~……すまない。そりゃ、そうだよな」

 

 クニシラセ解して、固有(ユニーク)ユニットとは、メールの様なやり取りができる事が解っていた。

 メッセージは、ベスティアからの物であった。


 いきなりの地震に、収まると同時、目と鼻の先に出現した、湖についての報告。

 そして、現在起きている事象に対する対応を問う物であった。


 湖をミコ・サルウェに帰属させたこと。

 部隊が落ち着くまで、一時休養、余裕があるものについては、湖の安全や、生態に関する調査指示を出した。


 

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