10月19日(水)
「マッツン~」
放課後、中間テストに向けて、学校の空き教室にて二人で勉強していると、タツミが唐突に言った。
「一応聞いておくけど、マッツンって俺のことか?」
「マッツンってイヤ?」
「はっきり言ってイヤだ」
「えぇ~、かわいいのに~」
「どこがだよ」
「なんとなく、男らしくもあるじゃん?」
「どこがだよ」
ついさっきまで真面目に勉強していたときは、清楚で可憐で可愛く綺麗だったのに、急にいつものタツミになってる。ギャップの高低差に耳がキーンてなりそうだ。
「じゃあ、なんだったらいい? マッチョン? マッチャン? マーチャン? マーチョン? マーシャン?」
「どれもイヤだなぁ。しっくりこないし、ダセーし、アホみたいだ。あと、最後のは火星人って意味だぞ」
「じゃピッタリだね?」
「どこがだ」
「ほら、マツザキくんってどこか達観したとこあるじゃん? それってちょっと見方を変えたら、宇宙人っぽくない?」
「全然っぽくない。俺のどこが宇宙人なんだよ。こんな平々凡々な一般男子高校生捕まえてさ」
「うぅ~ん……言葉で上手く言い表せないんだけど、どこか宇宙っぽいよねぇ?」
「そんなわけのわからんことを言うタツミのほうがよっぽど宇宙人だ」
「え~!? どこがぁ!?」
「おいおい、自覚なしか。タツミってめちゃくちゃ変わってるよ。どう見てもどう考えてもどう擁護しても変人だよ。もとい星人だ」
ま、そういうところが面白くて、魅力的でもあるんだが。
「そうなのぉ? じゃあ、私たちって変人同士だからピッタリ合ってる感じ? ワレワレ ハ ヘンジン ダ」
喉をトントン叩きながら、精一杯宇宙人感を出してる。
「おいおい、勝手に人を変人扱いするな。それは違うぞ。俺はまともな真人間で、タツミが異常な変人面白女の子だから、凸凹コンビだな」
「ズルい! マツザキくんだってクソ変人イカレポンチなのに!」
「それってただの悪口だな。つーか、さっきからそんなことばっか言ってるけど、何かそういうデータとかあるんですか?」
「出た~ッ! 流行りのやつぅ! それってロジハラだよぅ! マツザキくんってそういうとこあるよね? 女の子イジメて楽しいの?」
俺は頷いた。これはからかい半分だがちょっぴり本心。タツミみたいな可愛くて面白い女の子をイジりまくるのは面白いしからかいがいもある。
「やっぱ変態じゃん!」
「変人からさり気なく変態にするな」
「そこに気がつくとはやはり……天才か」
「タツミこそ、よく俺が天才だと気付いたな。そう、俺こそが天才! マツザキ教授と呼んでくれたまえ」
「……天才って言ってもバカボンタイプだよね?」
「主人公のクセに実父に知名度で負けてるような男と俺を一緒にしないでもらいたいな」
「そんなのどーでもいいんだよ!」
急に立ち上がるタツミ。
「急にどーした?」
「マツザキくんは、私にどんなあだ名で呼ばれたいの?」
「前提がおかしい。まず俺はあだ名で呼ばれたいなんて思ってない」
「でもさ、あだ名で呼び合うのもよくない? マッツン?」
「俺がマッツンならタツミはタッチョンか?」
「いいね! 二人で漫才師になろっ! 三年後はよしもとだね!? 『笑ってはいけない』でダウンタウンのお尻叩こう!」
「なんでだよ」
こんな感じだから、今日も全く勉強がはかどらなかった。テストはもう来週の月曜日だってのに……。
ま、そのおかげでマツザキと楽しく過ごせたと思えば、そんなに悪い時間でもなかった……のか?
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