5 冬先輩に色々話しました

「へぇ……。 そいつら、最低だね。 この学園はカースト制度を築くことは禁止されてるのにね」


 僕が分かっている範囲で冬先輩に話すと、彼女は不快感で顔を歪めた。

 やっぱり、この学校はカースト制度を築くことは禁止されてるんだよね。


「ですが、悪崎を始めとした陽キャグループはこの学園を支配しようと目論んでおり、その一端でカースト制度を築いてしまいました」


「支配ねぇ。 そいつはよっぽど偉いのかねぇ」


「どうも悪崎の家族は警視庁の父と教育委員会の母を持つため、それを傘に担任やみんなを脅していますね。 酷いとトイレに行かせてもらえずにみんなの前で失禁させられたうえで動画で撮られて拡散させられるとか」


「最低だねぇ。 無理やり失禁させて動画で拡散とか。 いじめじゃん、そんなの」


 さらに踏み込んだ内容を話すと冬先輩の表情がさらに強張る。

 最早いじめでもある光景に、怒り心頭なのだろう。


「まぁ、学園長がそれ以上のパイプを持ってる事すら知らないから、それが出来るんだろうね」


「え? どういう?」


「実は学園長の兄は警視総監で、弟は政治家みたいだよ。 相手が権力を振りかざすならこっちもそれ以上の権力を振りかざす覚悟を持ってるみたい」


 どうやら学園長の家系も相当ヤバい権力を持っている。

 しかも悪崎より上の。

 これで呼び出しでも受けたらどうなるか……。


「今回の話もボクの友人を介して学園長に報告するよ。 それで一応呼び出してくれるはず」


「だけど、あいつらの報復が……」


「それに関してはボクがキミを守ってあげるよ。 こう見えてもボクは武術もこなせるからね」


「そ、そうなんですか」


「あと、ボクの友人にもキミを守ってあげてと伝えるよ」


 一応、学園長に報告をしてくれるみたいだが、悪崎からの報復が来る可能性がある。

 だが、冬先輩は小柄だが沢山の武術をこなせるみたいだから、守ってあげると言われた。

 冬先輩の友人にも僕を守るようにと伝えるみたいだ。

 守られるのは情けないが、今はそれに頼るしかない。

 後で、冬先輩に武術を教えてもらおうかな……。


「しかし、何故優真君が陰キャ呼ばわりされてるんだろうね」


「それは、僕がゲームやアニメ、漫画が趣味だから。 あいつらはそれを趣味にしてる奴はキモイと汚物のように見られたんです」


「引くわー、ドン引きだわー。 奴らの基準だったらボクも陰キャ扱いじゃん」


「え? 先輩も?」


「うん。 ボクもゲームや漫画、アニメなどが好きでね。 それを趣味にしてるのさ。 そうだ、放課後でもいいからキミの好きなゲームとか漫画、教えてよ」


「あ、そうですね。 放課後にでもあいつらがいない時に」


「大丈夫。 先輩達がついてるから。 さぁ、残りの弁当を食べてトイレに行ってから教室に戻ろうか。 タイミング的にはその時に呼び出しをしてくれるはずだし」


 そう言いながら、僕と冬先輩は残りの弁当を平らげて、一緒にトイレに向かってからそれぞれの教室に戻っていった。

 その最中に、悪崎たちを呼び出す放送が響いて来たのだった。


 しかし、冬先輩も僕と同じような趣味を持っていたなんてね。

 上手くいけば話が合いそうだ。


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