第143話 フットボーラー補完計画Ⅲ その1



【前書き】

今更なのですが、「フットボールのギフト」のイメージOP

https://www.youtube.com/watch?v=VMZvf9QI3-U

「Go For The Goal」です。

ウイイレ好きの人にはたまらない名曲!

今度から読み始める時にこの曲をかけていただけるとテンションノリノリで読めますよ☆彡



「ままどおる、うまいな」と拓郎。


「うん、ままどおる、うまいな。あっ牛乳取って」と順平。


「ままどおる、うまいな。あっ吉村さんナイスカット」と武ちゃん。


「ままどおる、うまいわね。枠入れなさいよ陸」と遥。


「ままどおる、うまいな。ナイスパス」と涼。


「ままどおる、うまいなー。翔外すなよー」と優斗。


「ままどおる、うまいな。牛乳頂戴」と大輔。


 ………………………俺と司が今どこにいるのかというと、八西中サッカー部の部室にいる。


 で、何をしているかというと、月曜日の恒例で昨日の試合のビデオを見ている。


 もちろん、トレセンの方ではなく、八西中の1次リーグの試合だ。


 サッカー部のみんなはお土産のままどおるを食べながら昨日の試合の反省をしている。


 しかも拓郎のやつが「牛乳がどうしても欲しいです」と言いやがったものだから仕方なく近所のスーパーで牛乳まで差し入れしてやっている。


 まあ、確かにままどおるに牛乳は無くてはならない。嘘だと思うなら試してみるがいい。


 あんぱんと牛乳より、もう一段階上のレベルで愛称バッチシだからな。

 

「いやー、左サイドバックやっても、気が付いたら点を取ってまうなー。自分の才能が怖いわー」と自画自賛の優斗。


 おまえ、昨日の青森大山田セカンドの試合の中にぶち込んでやろうか、ああっ!!


「ってか、ずーっと押し込んでるからフォワードもサイドバックもポジション的に関係ねーだろこの試合」と司。


「ってか、おまえ、あがりっぱなしじゃねーか。センターバックの3人にばっかし守備やらせて何やってんだよ」と俺。


「いや、だってなー、神児君。拓郎君とか西田さんがもっと上がっていいよーっていったんや。なっ、なっ、なっ」と同意を求めている。


「そうなのか、拓郎?」と司。


「だって、向こうの攻撃全然来ないんだもん。あっ、ままどおる、もう一個いい?」


 そういってお土産のままどおるに手を伸ばす拓郎。


「あんた、それもう、三つ目でしょ!!」と遥。


 別にいいじゃないですか、司はお前のためのままどおるちゃんと一袋買ってあるんだから。


「まあ、たしかになー。前の試合に比べてさらに緩くなっちゃってるからなー」


「しゃーない、しゃーない、1年生もいっぱい使ったんやし、目標達成ってとこやで。なあー司君」


「まあ、しょーがねーか。じゃあ、ちょっくらネジを巻きなおすか」と司。


「なんのことや?」


 すると、ゴンゴンゴンとサッカー部の部室のドアが乱暴にノックされた。


「どうぞー」と司。


「おう、お邪魔しまーす」と言ってドアを開くと、なぜか三岳健斗がそこにいた。


 そして、「おじゃましまーす」とその後ろに翔太も。


「えーっと、えーっと、その、どちらさま?」と優斗。


「ビクトリーズU-14キャプテンの三岳健斗だ」そういってなぜか胸を張る健斗。


「あー、この前、勝ち試合でレッドカードもらってやらかした人やー」と嬉しそうに指さす優斗。


 途端に可哀そうなくらいに落ち込む健斗。


「そうやって人の傷口えぐるのよくないぞ優斗。健斗だってちゃんと反省してるんだから!!」と人の嫌がることは言ってはいけないことを教えてあげる優しい俺。


「そうだ、9割9分勝ってたのに、一瞬の油断で勝利を逃してしまったのを思い出させるのは人として思いやりに欠けるぞ優斗」と司。


「そうよ、一番冷静沈着でなきゃならないCBのくせに、裏取られただけでテンパって足引っ掛けてPK取られて、その挙句に退場食らってチームをピンチに陥れ、危うく二点差ひっくり返されそうになったことを指摘するだなんて男のすることじゃないわよ優斗」と遥。


「もう、可哀そうだから許してあげなよー」とこの場で唯一人の心を持ってそうな弥生。


 かわいそうに、健斗はいじけて部室の隅で丸まってしまった。


「しょうがないなー、はい、ままどおる」と同じCBとして他人事ではないと思っていたのだろう。3本目のままどおるを健斗に差し出す優しい拓郎。


 でもそれって、自分に対する保険だよな。


「……うめえじゃねーか、コレ!!」


 と、ままどおる一個で機嫌をよくする俺たちのキャプテン。こいつもう一回くらいやらかしそうだな、オイ。



「……で、なんで、健斗たちを呼んだんだよ」と俺。


「いや、メールでお土産買ってきたぞーって入れたら、健斗の学校、午後半休で暇なんで取り行くわーって返事が着て、だったらついでに部活の練習でうちのやつらしごいてくれよ……みたいな」と司。


 了解、よーくわかった。


「という訳で、何すんだよ、司」と、ままどおると牛乳ですっかり機嫌をよくした健斗が聞いてきた。


「いや、うちのフォワード陣をちょっと鍛え直してもらいたいんだよ。ここんところ緩い試合ばっか続いてるからさ」


「ほーう、なるほど。そいつは面白い。本気出しちゃっていいのかよ」と健斗。


「こいつだったら大丈夫、一応大阪府の選抜まで行ってるから」とそう言って優斗を紹介する。


「よろしくなー、健斗君」とフレンドリーな優斗。


「おう、しっかりしごいてやっから覚悟しとけ」と健斗。


 おい、かっこつけるのはいいけど口の周りに牛乳付いてるぞお前。


 という訳で、練習です。


https://kakuyomu.jp/users/t-aizawa1971/news/16817330664161320242

         

「こんな感じで、左サイドからカットインして健斗をぶち抜いてシュート決めて」


 とホワイトボードに上の図を書いて俺達に提示する。


「あー、なるほどなるほど」と優斗。


「お前の得意なパターンだろ」と司。


「わかっとるやーん」と優斗。


 ビクトリーズのSBとCB相手に自分の得意技の練習が出来るだなんてなかなかないチャンスに優斗はご満悦。


 すると……「あー、僕も、それやりたいー」と翔太。


 そうだよな、同じ右利きの左サイドからカットインするプレイスタイル。お前らかぶってんもんな。


「じゃあ、とりあえず、最初に翔太にやってもらってお手本見せてやれよ、神児、健斗」と司。


 てめー、ケンカ売ってんのか、司。


「じゃあ、行くよー、健斗君、神児君」と俺たちの了解を聞かずにいきなりドリブルを開始する翔太。


「おい、ちょっ、待てよ」と、俺の中のもう一人の木村拓哉が呼び止めたがあっさりと二人の間をぶち抜く翔太。


 お前はもう少し忖度ってもの覚えろ、翔太!!


 というわけで、3度目の正直でどうにか翔太を止める事のできたビクトリーズの右サイドバックとセンターバック。


 一応これでもレギュラーなんですよ。ホントホント。


 途端に部員の皆様方から白い目で見られ始める俺達。


 一年生の中から、ひそひそと、「ホントにあの人達、ビクトリーズの選手なの」という声が聞こえてきた。ガッテム!!!


 という訳で、その後、優斗と翔と陸についでに拓郎とそして隅の方で固まってひそひそ話をしていた1年坊をまとめてシャットアウトしてやったった。


 どうよ、これがビクトリーズのそしてU-15ナショナルトレセンに選ばれた実力ってやつよ!!


 と鼻高々に俺たちの守備力って奴を誇示してやったら……


「先輩なのに大人げないよね」とか「自分が上手いの見せつけたいだけだよね」とか「こんなんじゃ練習にならないよね」とか、


 隅っこの方で1年坊がヒソヒソヒソヒソ。

 

 どないすればよかったんですかぁぁぁぁぁ!!! 

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