第115話 なにわのガウショ その7
「そうなんやー、春樹君のお兄ちゃんと、にいちゃん、同じクラスなんやー」
優斗君と手をつなぎながら陽菜ちゃん。
「そうやで、しかも、部活もいっしょなんやー」
「そうなんやー、じゃあ、もうお友達になったん?」と陽菜ちゃん。
「もちろんやでー」そういって、隣を歩いていた俺に肩を組む。
あっ、僕達友達になったんですね。よろしくお願いします。
「うちもねー、春樹君と一緒のクラスになったんよ。うちらも友達になったんよねー」と陽菜ちゃん。
「うん、それに学童も一緒だもんねー」とニコニコ顔の春樹。
「かわいいなー」と目をウルウルさせて遥。
「お友達出来てよかったねー」と弥生。
ふと司を見ると、ほんの一瞬だが寂しそうな表情を見せた。俺は親友として気付かないことに決めた。
すると「お腹減ったー、ねぇー、にーちゃん、今日のお夕飯なにー?」と陽菜ちゃん。
「おう、今日の晩御飯はごちそうやで」と優斗君。
えっ、何、優斗君が晩御飯作るの?
「今日はウインナーと目玉焼きやー」とニッコニコの優斗君。
「やったー、ごちそうやー」と陽菜ちゃん。
うん、可愛い。それにウインナーはごちそうだよなー。
「へー、何、優斗君が晩御飯作るの?」と莉子。
「ああ、かーちゃんが仕事で遅いさかい、俺が晩飯作っとるんや」
「えっらーい!!」と遥を筆頭に女子陣が、
台所にほどんど入ったことのない、俺と司と翔太の男子陣は肩身が狭い。
「うん、おにいちゃん、料理上手なんやでー」と陽菜ちゃん。
「へー、優斗君、どんなお料理作ってくれるの?」と遥。
「おいっ」と声を潜めて言う優斗君。
「あんなー、目玉焼きと卵焼きやでー」
気まずそうに俯く優斗君。
「卵焼きはごっつう甘いし、目玉焼きはちゃんと黄身が目玉になっとるんや」と目をキラキラさせながら陽菜ちゃん。
うん、上等上等、俺なんて、目玉焼き作るといつも目玉壊しちゃうから。
「あっ、そうなんだー。ところで陽菜ちゃんの好きなものってなーに?」
ちょっと気まずいと思ったのか機転を利かせて話題を変える遥。
「お好み焼きー」とニッコニコの陽菜ちゃん。
「僕もお好み焼き好きー」とニッコニコの春樹。
「でも、にーちゃんが作るお好み焼きはペラペラなんや」と残念そうな顔。
「ちゃんと勉強して、今度おいしいお好み焼き作るさかいかんにんな」と照れくさそうに優斗君。
「絶対やで、にーちゃん」と陽菜ちゃん。
「陽菜ちゃんはどんなお好み焼きが好きなのー?」と弥生。
「ブタ玉も好きやけど、一番はネギ焼きやー」
「おおー、俺もネギ焼き大好き」と俺。
「あれ、美味しいよなー」と司。
「なんや、神児君、ここら辺でもネギ焼き食べれる店あんの?紹介してやー」と優斗君。
「あーいやー、ここら辺には無くって……」と俺、
「この前、大阪行った時に食べたんだ」と司。
すると顔をニカっとほころばせ、「なんや、神児君も司君も大阪来たんや」と優斗君。
「うん、自転車で行ってたよねー」と翔太。
「まったく、もの好きなんだから」と遥。
「普通、1日で行かないよ」と弥生。
「はぁ!!大阪まで自転車で行ったんか?それも1日で」を目を真ん丸に優斗君。
「ええ、」と俺、「まあ、何とか」と司。
「アタオカやん」と優斗君。
なるほど、それが世間一般の感想なんだね。勉強になりました。
「で、どこの店で食ったんや」と優斗君。
「たしか、風の……街だっけ」と司。
「うん、そうそう、風の街のネギ焼きのうどん付き」
「あー、知ってる知ってる、風の街ねー。あそこのネギ焼き美味しいなー。しかもうどんのトッピングなんて通やん」と優斗君。
あ、そうだったんだ。
「いや、泊まったホテルの人のおすすめだったんだ」と司。
「そうかー、でも、久々にネギ焼き食べたいなー」と優斗君。
でも、ネギ焼きってハードル高いんだよねー。そもそもここら辺には青ネギがあんまし売ってないし、牛筋とコンニャクの甘辛煮作るのも面倒くさい。
目玉焼きが得意な優斗君にはちょっとハードル高そうだ……と思っていたら、そういや、この前弥生がなんか言ってたっけな?と弥生の方を見ると……
「あのー、ネギ焼き作れるよ、今日なら」と弥生。
「マジかー!!!」と優斗君。
「キャー」と喜ぶ陽菜ちゃん。
「あっ、いや、でも、そんな今日知り合ったばかりでいきなりおじゃまやなんて」と優斗君。
「あっ、平気、平気、うちのお母さん大阪の人なんで、優斗君来たら絶対に喜ぶから」
「えーっと、じゃあ」そう言ってあたりをキョロキョロ見渡す優斗君。
「ほら、神児君もネギ焼き食べたいって言ってたじゃん。で、お母さんに言ったら、じゃあ、いっちょやるかーって、なんかスイッチ入っちゃって昨日から仕込んでるの」
……あれ、もしかして、今日、サッカー部の練習に付き合ってくれたのももしかして……さすがに鈍感な俺でも分かる。
「じゃあ、俺達もおじゃましちゃっていいかな?」と俺。
「えっ、もしかして、俺もいいの?」と司。
「もちろん、もちろん、だって司君のお母さんにはいつもごちそうしてもらってるじゃん」と弥生。
「じゃあ、ネギ焼き、いっちゃいますか!!」と莉子。
「えーっと、僕もいいの?」と翔太。
「もちろんよ」と弥生。言うが早いか、弥生はポケットから携帯を取り出して何やらお家に電話をかける。
「あのー、おかあさん、予定より人数が増えちゃったんだけれど大丈夫かな」
弥生が電話する様子を伺いながらニヤっと笑ってくる遥さん。えーっと……なにが言いたいんですか?
「オッケーだって」とほっとした顔の弥生。
どうやら、サッカー部より一足先に、俺達で優斗君の歓迎会を開くことになった。
ネギ焼き楽しみだなー……
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