第92話 キャノンボール その5
俺たちは梅田新道交差点の大阪市道路元標の前で記念写真を撮る。
すかさずおじさんツイッターで「梅田新道なう」とつぶやく。
念のために、炎上したら困るので、「今回はサポートカーと同伴付きで参考記録です」との追記も忘れずに。
その途端、「おめでとうー」と遥と弥生が飛び出してきた。
えっ、えっ、お前らどこに隠れてたんだ?
見ると司のおばさんと、俺の親父もやって来た。
「よくやったなー、神児」と親父。
「ありがとう」と俺。
「怪我はない」と司のおばさん。
「ピンピンだよ」と司。
「あれ、私の心配は」とおじさん。
周りではよく見る光景なのか、「おめでとう」と声を掛けてくれる人や、俺たちの格好を見て拍手をしてくれる人もいる。
なんか大阪ってあったかいな。
もっとも同じことを大阪からやったら東京の日本橋でも拍手をしてくれるのかな?
そんなことを思っていたら、お腹がぐーっとなった。
ああ、そうだ、最後の50㌔は補給するのももどかしくってそのままノンストップで走ったんだっけ。
とりあえず、眠気のピークが過ぎてしまったのか、俺も司もおじさんも目がバッキバキに決まっている。
するとおばさん、「とりあえず、ホテルにチェックインしてシャワー浴びてきなさい」と。
俺たちはゴール地点のすぐ目と鼻の先にあるアパホテルにチェックインするととりあえずシャワーを浴びる。
そういや着替えはーと思ったら、親父が着替え一式を持ってきてくれた。
自転車は輪行バックにしまって室内保管。
俺たちはきれいさっぱりすっきりしたいで立ちでロビーに行く。
するとそこにはみんなが待っていた。
「キャノンボール成功おめでとう」と遥。
まあ、正確にはサポートカーもつけてチームで走っているので規定からは外れているのだが、それを今とやかく言うのは野暮ってものである。
俺たちは素直に「ありがとう」とみんなからの賞賛を受ける。
本当の達成はいつの日かのために取っておこうと決めた。
「で、何食べたいんだ、神児」と親父が。
「うーん、せっかく大阪来たからなー」と俺。
「でも、今はたこ焼きとかじゃないよなー」と司。
「えっ、そうか?俺はたこ焼きが食べたいぞ」と俺。
「うーん、串揚げとかも食べたいわねー」と遥。
「じゃあ、とりあえず、道頓堀までいっちゃいましょう」とおばさん。
そんなわけで、タクシーをチャーターして道頓堀に行きました。
https://kakuyomu.jp/users/t-aizawa1971/news/16817330663967134282
道頓堀に着いて一発目に目に着いたのは、巨大なカニの人形の下で焼いている焼きガニ。
「えっ、何、大阪では、カニですら食べ歩きなの?」と遥さん。
「とりあえず、食べてみようか」とおじさん。
「カニの足7本」と早速注文するおばさん。
「まいどー」と威勢のいい店員さん。
俺たちの食道楽が始まった。
香ばしい焼きガニの香りが鼻に着く。
「うーん、これはビールがほしいですねー」と親父。
「はい、どうぞ」と既に自販機でビールを買っている司のおじさん。
大人たちは焼きガニ片手にビールで一杯。
俺たちは焼きガニ片手にコーラで一杯。
手のひらをカニ臭くさせたら、さて次は何を食べようか。
すると、「たこ焼き、たこ焼き」と遥。目の前には「甲賀流 本店」という看板が。
「あっ、俺、この看板見たことある」と司。
ならば、早速食べてみよう。
「おっちゃん、とりあえず、たこ焼き3つ」と遥。
「こりゃ、また、えらいべっぴんさんやな、どこからきたん」とおじさん。
「八王子やで、おっちゃん、知っとるか?」となぜか大阪弁で遥さん。東京と言わないあたりが八王子に対して誇りを持っている。
「こりゃ、また、エライ遠くから来てはりますなー、ほなサービス」とたこ焼きをおまけしてくれた。
「らっきー」とニコニコの遥さん。
さっそくイートインスペースでたこ焼きをパクつくみんな。
「おー、こりゃ、ふわっふわでおいしいなー」と親父。
「生地が違うのよね、生地が」となにやら研究熱心なおばさん。
「タコもプリプリでおいしいね」と弥生。
無言でパクつく司。おいお前、たこ焼きはちょっとなーとか言って無かったか?
たこ焼きを食べ終わり、一同とりあえずひと段落。
すると司が「俺、串揚げ食べたいんだよねー」とデブの本領を発揮する。
そういやこいつ、こっちに来た当初は鶏むねだのブロッコリーだの意識高い系の飯を食ってたんだけれど、引きこもりを境に自分の欲望の赴くままに飯を食い始めた。
当時本人に聞いたら、「飯食うくらいしか楽しみが無いんだからいいだろ」とちょっと逆切れ。その結果見事なおデブさんへと生まれ変わった司。
お前、せっかく落ちたんだから、もう元に戻るなよなー。まあ、もっとも、さっきおじさんに心拍計を見せてもらったら、今回のライドで16000㌔カロリーを消費していた。
実に成人男性5日分のカロリーを1日で消費してしまったのだ。まあ少しくらい食べても大丈夫か。
司のリクエストに応えるべく「元祖串カツだるま」なる店にGO。テーブル席もあったがこういうところならカウンターが鉄則だ。
席に着くなり司「豚カツ、うずらに天然エビ、イカにチーズにウインナー」と立て続けに注文。デブになるぞホントに。
遥も「全部一緒で」と潔い注文。
「アスパラにトマトにナスにホタテ」と上品なおばさん。
みんな好き好きに注文する中、「どて焼きと熱燗」と常連のような注文をするうちの親父。えーっと以前にこの店来てたんですか?
豚カツを食べると薄い衣と二度づけ禁止の薄口のウスターソースがよく合う。
キャベツと一緒に食べているとエンドレスで行けそうだ。危ない危ない。
親父の注文したどて焼きを食べてみると、おおっと、これもいける。ビールが飲みたかったけれどさすがにそれはまずいと思いどうにかコーラで我慢する。
ってか、どうして、揚げ物とコーラってこんなにも合うのだろう。
普段はコーラは節制してるのだが、こんな時ぐらいはいいよね。頑張ったご褒美だ。
おやおや、カキフライもあるのですね。うーんチーズ揚げも捨てがたい。
そうこうしている間に「うーん、ちまちま注文するのめんどくさい、この道頓堀セット一つ」とおじさん。
いつの間にやら大人たちはビール片手にわいのわいの、
今日はこのお店で終わりかな。
そんなことを思いながら、俺たちは食い倒れの街を堪能した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます