60.3人の子供

「うわぁぁぁぁっ、やめろっ、来るなぁぁ!!」


「グギャギャギャ」


「こ、こんなのいやぁっ」


「グギッヒヒヒッ」


「このっレイラを放せ!!」


 ゴブリンたちは自分たちよりも圧倒的に弱い得物を見るとジワジワ弄るようにして犯したり殺したりする性質を持っている。

 そのおかげかなんとか少女の膜が破られる前に3人の子供のもとへとたどり着くことができた。

 ゴブリンたちは少年2人を羽交い絞めにして観客にした状態で女の子の服を1枚1枚脱がしていくという鬼畜な遊びに興じていて上空から背後へと降り立つ私たちのことに全く気が付いていない。

 私がふともものホルスターから銃を抜くとユキトは耳を器用にペタリと畳んで銃声に備えた。

 この間の110連ガチャでまた使い勝手のいい9mm弾を撃つことができる拳銃が手に入った。

 私はつい舞い上がってホルスターまで作ってしまったのだ。

 私の右太ももにベルトで固定されたホルスターは銃を収納するとちょうどグリップが右手の位置に来て絶妙に抜き放ちやすい。

 私はしっかり左手を添える基本姿勢で1匹ずつゴブリンを殺していった。

 やはりゴブリンには9mmだな。

 銃で周囲を一掃したあとは子供たちの周辺にいるゴブリンだけが残る。

 この距離で狙いを外すことはあり得ないが、あまり人質に近い場所は事故が怖い。

 まあこいつらは私がサーベルを抜くまでもない。

 ホルスターに銃を収めたときにはすでに白い閃光がゴブリンたちの首を圧し折っていた。

 研ぎ澄まされた小周天によってすべての能力が人間を超越し始めている私にはなんとかユキトの動きを目で追うことができたが、子供たちには何が起こったのかわからなかったようだ。

 しかしユキトはサービス精神を忘れない兎だ。

 空中で3回転ほどゆっくり宙返りをしたユキトは子供たちの前に降り立ちドヤ顔でポーズを決めた。

 可愛い。

 

「あ、兎さん」


「本当だ。あの兎さんかな」


「たぶんそうだろ。こんなことができる兎は何匹もいないよ」


 子供たちはどうやらユキトのことを知っているらしい。

 なるほど、面識があったわけか。

 ユキトが助けたいなんてどんな理由かと思ったけど、顔見知りなら納得だ。

 しかしいったいどこで知り合ったのだろうか。

 ユキトに聞いてもたぶん要領を得ないだろうから子供たちに直接聞くこととする。

 同年代との会話は緊張するな。

 

「あ、あのさ君たち」


「あ、どうも」


「助けてくれてありがとうございます」


「もしかして、この森に住んでいると言われている魔女様ですか?」


「魔女?」


「違うんですか?」


 詳しい話を聞いてみると、どうやらこの森には大昔に本物の魔女が住んでいたらしい。

 魔力やスキルのある世界で魔女とは。

 実際魔法スキルを持っているだけの女を魔女とは呼ばないから、怪しげな力を使う人をそう呼んでいたようだ。

 しかし私がそんなおばあに見えるか?

 

「その魔女ってずっとここに住んでたの?」

 

「うーん、わかんない」


「でも最近は魔女様が帰ってきたとか、長い眠りから目覚めたとか大人たちが言ってたよね」


「うん。なんでも魔女様は神の雷と呼ばれる魔法で巨大な化け物を討伐したって言われてて、最近晴れてるのに雷の音がするときがあるからそうなんじゃないかって」


 晴れてるのに雷ってなんだそれ私はそんなの聞いた覚えはない。

 あ、もしかして銃声のことか。

 ライフルやショットガンの音って隣の山くらいから聞くと雷鳴に聞こえないこともないよな。


「なるほどわかった」


「やっぱり魔女様ですか?さっきの神の雷ですよね」


「違うっての。どうでもいいけどそっちの子服着たら?」


「きゃっ、ちょっとジャック、リオン、じろじろ見ないでよっ」


「「ご、ごめんっ」」


 私は見ないでって言われてないので見てもいいってことですね。

 ロリっ子が1枚1枚ゴブリンに剥ぎ取られた服を再び着込んでいくのをじっくりと観察する。

 この歳でこの体形、これは将来凄いことになりそうな予感のする少女だ。

 3人の背丈は私と同じくらいだ。

 私は小柄なほうだからこの子たちは私よりも1つか2つくらい年下だろう。

 10歳か11歳といったところか。

 胸はまあ私とどっこいといったところだが、尻の丸みが凄い。

 これは丈夫な子供を産みそうないいお尻だ。

 拝んでおこう、ナンマンダブ。


『…………』


「ごめん、聞くって」


 ユキトがジト目で睨んできている。

 早く事情を聞けとでも言わんばかりの顔だ。

 可愛い。

 

「それで、なんで子供だけでこんな森の奥まで来てるの?普通に死ぬよ?いや、死ぬだけでは済まないことはさっき思い知ったと思うけど」


「は、はい。私たちここから1日くらい歩いた場所にある村に住んでるんですけど……」


「去年は凄い干ばつで作物が全然育たなくて」


「なんとか冬は越せたんですけど、もう村には何も食べるものが無くて」


「ゴブリンくらいなら子供でも倒せると思って……」


 ゴブリンの魔石を売って食べものを買おうとしたと。

 少しでも大人たちの助けになればと思って森に分け入ったらしい。

 そして迷ってこんなに奥まで来てしまった。

 子供の行動でありがちなやつな。

 大人しくしていてくれるのが大人には一番ありがたいんだよ?

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