第80話 神の慈悲と御業


『遅い。なぜ、すぐに町を目指さなかったのだ』


(え? これってワタシ、怒られちゃってます?)


『当たり前だ』


(え? なんで? どうして?)


『ひととは、群れるモノのであろう? 故に、転移したのなら、すぐに最寄りの町を目指すのが一般的であろうに』



この神様のおっしゃることには、


転移直後のワタシの体は、この世界の魔素に慣れさせるための仮の器で、全くの未完成品


本来ひとなら、転移してすぐに町に来るはずだから、そのタイミングで教会に誘導して、


その時に本来の体にバージョンアップするはずだった、ということみたいです。


どうやらワタシ、慣らし運転中というか、いわゆるチュートリアル中で、不完全な肉体だった模様です


『我との邂逅を経てはじめて、本来の体に調整できるというのに』


(え~、そんなこと言われても・・・)

(ていうか、そもそもワタシ、転移してたんだ・・・)


記憶が曖昧なワタシ的には、突如、衝撃の事実を知らされてしまった感じです




『しかも、そなたは未完成の体で、随分と不相応なレベルアップをしてしまったようだ』


(もしかして、急激なレベルアップの後に調子がおかしくなったのって、そういう理由ですか?)


『不完全な体で急激なレベルアップなぞ、できようはずがない』


(なるほど。どうやら、なぞは解けたみたいですね!)


ん?

金〇一少年?

コ〇ン君?

それとも、ワト〇ン君?




(それで、ワタシの体は、どうなるのでしょうか?)


『今から完成体に調整し直そう』


(おお! 神様、あざぁ~っす!)


ということで、ワタシ、神様にちゃんとした体に治してもらうことになりました


ワタシ、リニューアルです


『それでは参るぞ?』


(はい、オナシャッス!)



ピカッ



『無事に終わった』


(え? もう?)


一瞬すらかかっていないような短時間で終わってしまったワタシのリニューアル


なんだかちょっと、不安です


なんて思っていると、なんだかお尻に違和感が


(ん? お尻に何かついてる?)


振り向いて確認してみると、銀色のモフいヤツが、ゆらゆらと揺らめいています


なんと、ふんわりモフっとした銀色のしっぽが、ワタシのお尻から生えていました


(もしかして、ワタシ、しっぽ実装ですか?)


『これで、そなたは、完成体のキャットピープルだ』


(そ、そうですか・・・)

(ま、まあ、ネコミミだけあっても中途半端な感じだったから、良かったといえば良かったのかな?)


『これでこの世界に完全適応することができるであろう』


(ありがとうございます)


『今回は特別に、仮の体がオーバーフローする直前のレベルまで復元しておくことにした』

『感謝するがよい。【神の慈悲】である』


(え? ワタシのレベル、元に戻るんですか?)

(それってもしかして、体調不良の問題も、解消されるんですか?)


『ああ、大丈夫だ、問題ない』




なにはなくとも、とりあえずワタシは自分のステータスを確認です



Lv.9


HP 25600

MP 25600

攻撃 2560

防御 2560

魔力 2560

速度 2560

幸運 2560


スキル

 【言語理解 Lv.32】

 【インベントリ Lv.32】

 【買い物履歴 Lv.32】


テクニック

 【猫脚】



(やったー! レベルが体調不良直前まで戻ってる!)

(しかも、スキルレベルは上がったままです!)



『そしてさらに、今回は大盤振る舞いだ』


(え? 大盤振る舞い?)


『そなたの着ている服、そして所持している服全てに、尻尾穴をあけておいた』

『穴をあけたところは、布を重ねて丈夫にし、まつり縫い、今回は、端まつりで仕上げておいた』

『感謝するがよい。ひとの言う【神の御業】である』


(え? なに? まつり縫い? 【神の御業】?)

(普通【神の御業】といったら、天変地異がらみとか、ミラクル超能力とか、そういうのじゃないの?)

(端まつり? しょぼっ。【神の御業】めっちゃしょぼっ!)


『なんだ不服か? ならば全ての服に自分で尻尾穴をつけるか?』


(いや、それは面倒なので、ありがたいといえばありがたいんですけど・・・)




そんなこんなで神様から完成体にしてもらったワタシ


銀色ふわモフなしっぽ付きのキャットピープルなスキニーちゃん、爆誕です!



【神の慈悲】により、レベルも本来あるべきレベルに復元してもらえて、体調不良も一発解消!


まさに、本当の意味で、神に感謝です!


(【神の御業】と銘打った【まつり縫い】は、ちょっとどうかと思うけど・・・)




『ではな。ゆくりなくも、また邂逅することもあろう』


(はい、ありがとうござ――)



・・・



ワタシの意識は、そこで途切れたのでした


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