第51話 外食


入浴と洗濯で心も体もリフレッシュしたワタシは、


お着替えをしてジェニー姐さんとお部屋に戻ります


戻るのはもちろん、ジェニ子の部屋こと、ジェニー姐さんのお部屋


(まあ、ジェニ子の部屋と呼んでいるのはワタシだけなんですけどね)



♪るーるるっ、るるる、るーるるっ、るるる、るーるーるーるーるーるるー


例のテーマソングを口ずさみながら、くつろぎタイムのワタシ


暇を持て余したので、【買い物履歴】サーフィンを楽しむことにします


(分類のジャンルで、気になっているところがあるんですよね~)



その未確認ジャンルは[外食]


(何だか美味しそうな感じがする名称だよね?)


そんな期待を込めて[外食]を展開してみると、更に小分類に分かれていました



[ファストフード]

[大衆食堂]

[ファミレス]

[お食事処]

[レストラン]



各項目を更に展開してみると、多くのメニューが表示されました


そのメニューの名前はどこかで見たことがあるものばかり


(これは、ワタシがお店で食べたことがあるメニューかな?)

(お店で食べたお食事も、一応、買った、という扱いになっている感じ?)

(まあこの際、細かいことはどうでもいいか)

(よし、早速選んでお夕食にしましょう)



「姐さん、姐さん! お夕食にしましょう!」


「そうね、もうそんな時間よね」


「姐さんはお夕食、何がいいです?」


「え? またご馳走してくれるの?」


「もちろんです」


「ありがたいけど、いいの?」

「けっこう負担になってるんじゃない?」

「食事以外でも、いろいろもらっているでしょ?」

「今までにかかった費用の分、お金出すわよ?」


「いえいえ、大丈夫です」

「全部タダみたいなものですから、全然平気ですよ?」

「それに、ワタシが一緒に食べたいだけですし」


「そう? お金ならそれなりに持っているから、遠慮なく言ってね?」


「ハイです。お金に困った時にはお願いしますね」

「今は全然困っていないので、問題なしなのです」

「お散歩に連れて行ってくれたお礼だと思って、お食事その他諸々はワタシにお任せです!」


(今ワタシに余裕があるのは、お散歩でチャージ魔力量を稼げたおかげですしね)

(ワタシひとりでは怖くて外を出歩けないですし)

(お世話になっているジェニー姐さんには、ドンドン奢っちゃいますよ!)



「そう? それなら、お言葉に甘えちゃおうかしらね」

「正直、ここでは携帯食みたいのばかりで、飽き飽きしていたのよね」


「どうぞどうぞ、お気になさらず」

「それで、どんなモノが食べたいです?」



そんな感じで、ジェニー姐さんのお好みを聞いて、お夕食を選んでいきます


「そうねぇ~、体調も戻ったし、夜はちょっとモリモリといきたいわね~」

「でも、あまりコッテリしたのは避けたいのよね~」

「サッパリしていて、お野菜もたくさんいただけるモノなんてあるかしら?」


そんなご要望にお応えして、ジェニー姐さんのお夕食は




【冷しゃぶサラダとナスの揚げびたし 小うどんセット 880円】 たまに行ったお食事処のうどんセットです



レタス、大根、トマトを中心としたサラダの上に、豚の冷しゃぶが乗った大皿、


これだけでお腹いっぱいになりそうなボリューム感


季節のお野菜としてナスの揚げびたしもついた、小うどんのセットメニューです


お野菜たっぷり、食べ応え十分、いいんじゃないでしょうか?



ジェニー姐さんはお箸の国の人ではございませんので、フォークもご用意します


ジェニー姐さんは、早速とばかりにニコニコ笑顔で食べ始めたので、気に入ってくれた模様です




一方、ワタシが選んだモノは




【豚バラ玉ねぎの旨だれ炒め定食 味噌汁つき 650円】 よく通っていた定食屋の一品 豚肉たっぷりです



(なぜか、ジェニ子の部屋に戻ってきてから、玉ねぎが食べたくなっちゃったんですよね~)


無意識に、例の部屋の主のヘアスタイリングにインスパイアされていたワタシなのでした




「この黒紫の植物の実? 噛むとじゅわっと汁の旨味が口いっぱいに広がって、とても美味しいわ!」


「お気に召しました? それ、ナスの揚げびたしです」



そんな感想を交えつつ、ワタシ的には懐かしいお味に舌鼓を打ってしばし、


ん?

懐かしい?



ジェニー姐さんもワタシも、全てを完食して


「ごちそうさまでした」


そうワタシが口にした時でした


その言葉を発した途端、目の前の定食一式が消えてしましました



「え? 何が起きたの?」


「あらやだ、消えちゃったわよ?」


ジェニー姐さんのお夕食も消えてしまったようです



(これって、どう考えても【買い物履歴】スキルが関係しているよね?)

(ワタシには、それしか取り柄ないし・・・)

(うぅ~ん)

(これはアレかな? [外食]は、食べ終わると食器を下げてくれるのかな?)

(でもそれって、逆に言うと、食器は返せってこと?)

(食器類は料金に含まれません的な?)

(むむむっ、いずれにしてもこれは、人前であまりお見せできないかも・・・)



食べていたモノが目の前でいきなり消えてしまっては大騒ぎになることは必至


極力知られないようにするのが吉でしょう


ということで、



「これは、ナイショってことで!」



いろいろと聞きたげなジェニー姐さんの目線は完全スルー


とりあえず、ジェニ子の部屋以外では使わないことにしたワタシなのでした



(でも、自動で下げ膳とか、飲食業界的には神だよね!)


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