第42話 見回り、巡回、ニャルソック


「あのっ、ワタシも見回りについていってもよいです?」



地下室から地上の管理小屋に出てきたワタシの、開口一番のセリフです


ザックさんたちが朝のミーティング的なことをしているのが目に入ったので、


早速自分の要望を伝えてみました



ザック「ん? 嬢ちゃん、魔物退治、できんのか?」


「えっと、おっきい虫とかは倒したことないけど、子モスキーなら得意かもです」


ザック「んん? 子モスキーだぁ?」


「ですです」


ザック「アレは無害だ。はなっから魔物扱いしちゃいねぇ」

カルロ「そうですね、子モスキーを倒せたからといって、ちゃんとした魔物と対峙できるとは思えません」

マックス「悪いが同行には反対だ。何かあった時、守り切れない」

ジャン「足手まといは、御免被る」

レオ「右に同じ」



「えぇ~」

「ぶ~ぶ~っ」

「ワタシ、結構強くなってると思うんだけどなぁ~」

「だって、レベル、結構上がったんだよぉ~」



ザックさんたちの反対意見に、ひとりブーたれるワタシ



「あのね、レベルで上がるのは、あくまでポテンシャルよ?」



すると、知らぬ間にワタシの隣に来ていたジェニー姐さんから、ツッコミを頂戴しました



「へ? ドユコト?」


「レベルが上がったからって、いきなり能力が急上昇するわけじゃないってこと」


「え?」


「だって、なんの鍛錬もしていないのに、いきなり身体能力が向上するはずないじゃないの」


「・・・言われてみれば、そうかも・・・」


「それにそもそも、あなた、体力ないでしょ?」


「・・・」


「運動不足っぽいけど、そんな状態で、みんなについていけるの?」


「・・・ぐぅっ」

「あっ、今、ぐぅの音がでた!」

「あれ? でちゃダメだったんだっけ?」


「あなたってば・・・」

「まあいいわ、私が付き添いしてあげるわ」

「日中は暇だしね」

「お散歩がてら、その辺を回ってみましょう?」


「へ? いいんです?」


「だって、行きたいんでしょ?」


「ハイです!」



ザックさんたち駐在員さんには相手にしてもらえませんでしたが、


どうやらジェニー姐さんがワタシに手を貸してくれるようです


日中は旅人がほとんど来ることはないので、薬師も暇なのだそうです



「そういうことなんだけど、あなたたちは、それで構わないかしら?」


ザック「あぁ、ジェニーが付き添いするんなら、オレたちが口出しすることはねぇ」

カルロ「そうですね。ジェニファー様が同行するなら、何の問題もないでしょう」

マックス「むしろ過剰戦力」

ジャン「ジェニファー殿のご意志とあらば」

レオ「右に同じ」


「じゃ、そういうことで。私がこの辺を案内するわね?」


「ジェニー姐さん、よろしくオナシャッス!」



そんな感じで、駐在員さんたちからの同意も取り付け、


ワタシとジェニー姐さんとのお散歩? が決定しました



(それにしても、ザックさんたちのジェニー姐さんに対する態度・・・)

(ちょっとかしこまり過ぎじゃない?)

(まるで上位者に対する畏怖みたいな・・・)


ジェニー姐さんに『様』や『殿』付けするザックさんたちに、何だか違和感を覚えるワタシです




「今から行く? それとも何か準備が必要かしら?」


ジェニー姐さんがワタシの予定を聞いてくれます


「今すぐ行きたいです! けど、ちょっとだけ待ってくださいね~」



そう言って表示させるのは、もちろん【買い物履歴】画面


そのメニュー[装飾品]から選ぶのは、




【シュシュ ふんわりレース パールデコレーション付き 黒 1,490円】×2




これはアレです。たぶん義姉が室内使い用に購入したヤツです


ちょっと大振りで華やかなのですが、黒なのであまり存在を主張しすぎたりはしません


数粒ちりばめられたイミテーションのパールが良いアクセントになっています


(大人の女性向けっぽいけど、どうかな?)

(ジェニー姐さんの赤髪に、黒のシュシュ、結構いいんじゃない?)

(ワタシの銀髪にもなかなか似合うと思うんですよね)

(お友達とお揃いのモノを身に着けるのって、素敵でしょ?)


ということで、ジェニー姐さんとワタシ用で2つ


オソロでシュシュを装備しちゃいましょう



さらに、【買い物履歴】メニュー[帽子]から、2つ選びます




【麦わら帽子 女性用 フリーサイズ 500円】 100円ショップのお高いヤツ たぶん義姉のお庭いじり用


【野球帽 ヨコハマまるは吠え~るズ 3,000円】 子供の頃お小遣いで買ったヤツ




ジェニー姐さんには、ちょっと小ぶりだけどサイドに装飾がある麦わら帽子


値段の割には良いセンスしています



ワタシには、お洋服と同じ濃紺色の野球帽


子供の頃応援していたご贔屓球団のキャップ


Wの白い文字が正面を飾ります


ん?

スーパーカートリオ?

ポンセ?



(直射日光の下を歩くから、帽子をかぶって日射病対策)

(そして、髪の毛を束ねて、暑さ対策しなくっちゃね)



早速ジェニー姐さんに披露します


「ジェニー姐さん。これ、使ってくださいな?」


「ん? 帽子と、これはなに?」


「このシュワシュワした輪っかは、シュシュって言うんですけど、」

「ちょっとオサレな髪留め? みたいな感じです」

「髪の毛、そのままだと暑いでしょ? これを使って、後ろかサイドでまとめちゃいましょう」


「なるほどね。じゃあ、まとめるの、お願いしていい?」


「もちろんです!」


そんな流れでジェニー姐さんの髪をまとめるワタシ


(真後ろでまとめて、そのままポニテでも良かったんですけど、)

(小じゃれた麦わら帽と合わせるなら、)

(サイドポニテにして前にちょっと流した方が雰囲気出るかも)

(帽子も少し斜めにかぶる感じかな)


大人なジェニー姐さんをキリリと涼し気にアレンジしちゃいました


(まあ、服装は例のジャージなんですけどね)



「どうかしら? 似合っていて?」


「カッコイイです!」


ザック「あぁ、似合ってると思うぜ」

カルロ「とてもよくお似合いです」

マックス「素敵だと思います」

ジャン「粋な着こなしで」

レオ「右に同じ」



みんなに褒められてご満悦のジェニー姐さん


そして、そんな姐さんの笑顔をみて、ワタシも何だか嬉しくなっちゃっいます



ちなみに、ワタシは野球帽なので、素直に真後ろのポニテです


そして帽子をかぶったのですが、


『ブルっ』


「へ?」


頭の上にネコミミがあるのをすっかり忘れていたワタシ


そして困ったことに、このお耳、ワタシの意思とは無関係に動くのです


帽子どころか、何かがお耳にちょっと触れるだけで、


『ブルッブル』と自動的に振るい落としてしまいます


何度か試しましたが、そのままではWマークの野球帽をかぶることはできませんでした



結局、ザックさんにお願いして帽子に2ケ所穴をあけてもらい、


お耳だけ出るようにして事なきを得ました




ネコミミ丸出しで巡回警備・・・


まさに、猫の巡回警備(ニャルソック)です



「よ~っし、このままニャルソックに出発だにゃ~!」


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