第40話 邪神の居場所はどこだろな
俺は途方に暮れていた。
結局邪神も倒さなければいけなくなってしまった。
ひとまずタマミとラーブにも事情を説明し、アルカが目を覚ますのを待った。
今のところヨーリンは悪さをしていない。むしろ比較的印象はよさそうだ。
相変わらずのコミュ力でヨーリンとも仲良くなったラーブ、洗脳のようなものの影響か古くからの知り合いみたく仲がよさげなアルカ。
「まあ落ち着けよ」
「でも、これだとラウルちゃんのあられもない姿も見られるってことでしょ?」
「いや、男の裸見たって仕方ないだろ」
「今は違うでしょ!」
などと言ってなぜかタマミだけは不機嫌だった。
話し相手になってやると言ったから、俺としては雑に扱えないし怒ってくれるのもいいかもしれない。
とはいえ本題は邪神だな。
「倒すぞとは言ったものの、何からやるかな」
正直に言ってヒントはなかった。
どこに封印されているのかについても、神は知らぬ存ぜぬで役に立たない。
場所が移ったとか漏らしていたが、詳しいことは話そうとしない。
口が軽そうなラーブの神もそこに関しては同じだった。おそらく本当に知らないんだろう。
なら。
「なぁ、邪神はモンスターに力を与えるんだろ?」
「そうだ」
「ならシニーちゃんは何か邪神について知ってるんじゃないか? なんてったって死神と呼ばれるほどのモンスターだろ?」
「聞いてみたらいいんじゃないか?」
「シニーちゃん。何か知らないか?」
「シニーは知らない。ダンジョンのモンスターは興味なかったんじゃないか?」
「そうか」
「それはそうだ。そもそもこの死神の年齢からして邪神が封印される前に現れた個体には見えぬからな」
先に言え。
「失礼な! シニーはこれでも」
「わー! シニーちゃん。ミステリアスな女の子はそう簡単に年齢を明かさないものだから!」
ラーブが死神のしゃべるのを邪魔をする。
もしかしたらヒントになるかもしれなかったが、仕方ない。
知らないって言ってたんだから、聞けても同じだと思おう。
「それより神、さっきからいらない情報ばかりでアイデアとかないのか?」
「それは人間の特権だろう? 我は力を与える存在ではあっても答えを教える存在ではないからな」
「何の話だよ」
神って知らせを与えてくれるんじゃないのか? 個体差か?
しかし、これじゃどうしたらいいか一向にわからない。少なくとも、神と話していても解決しないってことだ。
そういえばこの神、万能じゃなかったな。
「おい」
「ヨーリン。ヨーリンは邪神について心当たりはないか?」
俺は神を無視しヨーリンと話すことにした。
「残念ですがないですわ。引きこもっていた時期が長いので邪神については何も、ワタクシが引きこもる前に力を与えてくださったのかもしれませんが、それだとあまりにも昔過ぎて思い出すのが面倒ですわ」
「ま、思い出しといてくれると助かる」
「ラウル様のためならなんでもします」
何だか影が熱くなった気がする。
そんなに気合い入れなくてもいいんじゃないか?
「それにしても、力の源を知らないのって怖くないのか?」
「全く。ワタクシの力がどこから来ているのか、はっきりわかるほうが難しいと思いますし」
「それもそうだな。そもそもヨーリンは影武者作ってまで引きこもってたわけだしな」
外のことなんて、ましてや邪神のことなんて調べるつもりもなかったんだろう。
一番近そうな死神にヨーリンまで知らないとなると、地道に足で調べるってことになるのか。
「そういえば、ワタクシは外に出ることはありませんでしたが、ジョーカー・ウランクはこの世界で動いていたわけですし、何か知っていたのでは?」
「つっても倒しちゃったし……」
何かが引っかかり俺は少し黙り込んだ。
魔王軍を滅ぼしたようなものだが、魔王と近しい誰かがまだいたような。
「そうか。ここ最近のこととは言え、魔王がベルトレットを乗っ取っていたんだ。俺とアルカ以外の三人なら何か知ってるかもしれない」
「そうですわ! きっとそうに違いありません!」
「ヨーリン。このことに気づかせるためにわざとウランクの話を?」
「いえ、違います。ワタクシはただ、ウランクなら知っていたかもと思っただけです。これはラウル様のお手柄ですわ」
「そうか?」
「そうです。素晴らしいです!」
理由なくほめられていた時はしっくりこなかったが、こうして納得できる理由でほめられるとヨーリン相手でもなんだか変な気分になる。
が、今はそれより善は急げだ。
ちょうど魔王討伐の報告も任せようとしていたところだし丁度いい。
三人とも気絶していたし遠くには行けていないだろう。
俺は今の仲間たちを引き連れて、元仲間たちの場所まで移動した。
起きていなければ動いていないはずだ。
「ベヒはあの子たちを大人しくさせておくから」
そう言ってベヒは暴れる巨龍たちを大人しくさせていた。
すぐに戻ってきたが、どうやら巨龍の中でも結構偉い巨龍だったらしい。
姿が変わっても命令に従うとはなかなかだ。そうは見えないけど。
「さて、見つけた」
「……」
と言ってもカーテット、リマ、ペクターの三人からは返事はない。
気絶しているだけだといいが。
「おい。起きろ。戦いは終わった。起きるんだ」
「なんです? おはようです」
「ん。アルカ? そんな喋り方でしたか? 女の子ならもっと丁寧な話し方を」
「そうです。神も、おしとやかな女性を気に入ります」
どうやら三人とも気を失っていただけらしい。
話す元気もあるようだ。さすがは元勇者パーティのメンバー。
「今はそんなこと聞いてるんじゃない。知ってることを洗いざらい話してもらおうか!」
「知ってることです……? 一体何のです……?」
「そうですわ。もっと詳しく話していただかないと」
「それより、どういうことでしょう。アルカが二人いるのはどういうことでしょう。おお。神よ。どうか冷静な判断力を」
くそ。俺のことをおちょくるとは結構元気みたいじゃないか。
しかし、そんなことしてる場合ではない。
俺は何も元仲間たちとダラダラ話をするために来たのではない。
「俺のことはいい。説明は後だ。とにかく今はお前ら」
「おにいはどいてて」
「あ、アルカ?」
俺は不意にアルカに押しのけられた。
「おにいはこういうの苦手だったでしょ? 話とか人を見抜くのとか交渉とか。大丈夫。わたしだってできることはあるから。ここはわたしに任せて。神様と作戦会議でもしててよ」
「おう。じゃあ頼む」
そういやそうだった。
俺は参謀向きではない。
もちろんできないとはいわないが、どうやって実行するかやりながら考えてしまう。
当たって砕けろの精神だ。
それに比べてアルカはどちらかと言えば一歩引いて物事を考えられるタイプ。
動く前に考え、俺のブレーキになってくれていた。
「ラウル様はここまで最短経路で来ていたのが素敵でしたよ」
「おう。ありがとな」
まさかヨーリンにフォローされるとは。
と言ってもアルカも大人になったな。俺がいなくても一人で色々できるんだもんな。
アルカが話すと、元勇者パーティのメンバーは、アルカが二人いることに対しての混乱がなくなったのか落ち着いた様子だった。
「魔王に操られてたでしょ? そこで聞きたいんだけど、魔王の親玉邪神について何か知らない?」
「あたしは知らないです」
「邪神? いえ、アルカの言う通り、操られていたんでしょうけど、ベルトレット様の様子がおかしくなってからの記憶が曖昧なので邪神がどうこうなんてのはさっぱり」
「すみませんがわかりません」
「そもそもここはどこなんです?」
「それすら覚えてないの!?」
元勇者パーティまで誰も邪神について何も知らない様子だった。
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【あとがき】
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