第25話 新しい幼女たちからの情報
さて、四天王の二番手、ブビルナとその部下軍団を倒したわけだが。
「お姉ちゃんかっこいー!」
「さすがママのリーダー」
「あ、握手してほしいの」
ニコニコ笑顔で俺のことを褒めてくる大量の幼女たち。
「ママー」
褒めてくれるのはありがたいが、俺はママではない。ラーブと間違えてるんだろう。
いや、別に幼女に囲まれても悪い気はしない。ラーブじゃないが子どもは好きな方だ。子どもたちのために魔王を倒そうとしていると言っても過言ではない。だが、俺自身は子どもをあやすのが苦手だ。
正直、今もどうしたらいいのかわからない。
戦場で子どもが逃げ惑わずに笑顔なのもおかしい。おかしいよな?
俺は、避難させるべきなのかどうかも判断できずに棒立ちしてしまっている。
「お、おい。ラーブ。これだけスキルを使ったんだ。何か考えがあるんじゃないか?」
「ないよ」
「だよな。ってはあー?」
ダメだった。何も考えなかった。
くそう。さっきのブビルナと違い、どうやら次の四天王がすぐに来るわけではないようだが、どうにかしないといけない。
そもそもまた人質を取られては厄介だ。
「まさか人質を心配してるの?」
「なんでわかった」
「ラウルちゃんってろ」
「違うからな!」
「まだ何も言ってないじゃん」
「どうするんだよこれ」
今のラーブは頼りにならない。さっきまではいい感じだったのに。
俺は頭をかかえた。
「ママ! ママ!」
ラーブを呼ぶ一人の声。
辺りを見回すと、俺がうろたえている間に、なんだか幼女にまとまりができているような気がする。
「どうしたの?」
「統率を任されていたあたしがみんなを整列させておきました」
確かにラーブを呼んだ子の言う通り、幼女たちが列になって並んでいる。
「ママ!」
「なんでラーブが子どもみたいになってるんだよ」
「だってこの子すごいしっかりから」
「ママほどじゃないです」
照れている。両方とも照れている。
だが、そうか。死神の時もそうだが、記憶や能力はラーブのスキルを使った後も引き継ぐんだったか。
これはチャンスかもしれない。
「一つ聞いていいか、な?」
丁寧に、そう丁寧に。
怯えさせないように気をつけないとな。
「なんです?」
「残りの四天王について知ってることを教えてくれない?」
「いいですよ。ただ、あたしたちが知ってることはそんなになくて」
「はいはい! 残りはキング・ドミニアーとエース・シクサルなの!」
「多分キング・ドミニアーが次に出てくると思う!」
誰より先に言いたいのか、手を上げて何人かが声をあげた。
「みんな静かに! とまあ、名前と実力の順番くらいはわかってるのです。ただ、あたしたちはただのブビルナ様。あっ」
「いいよ。どっちでも」
「ありがとうございます。あたしたちはブビルナ様の部下です。命令で調査はしていましたが、あまり多くの情報は得られませんでした。他にわかることとすれば、例えば、キング・ドミニアーはとても大きいことです。攻撃は一番大ぶりな代わり強いかと思います。エース・シクサルは圧倒的な実力者です。一番四天王としての時間が長いですが、それ以上のことはさっぱり」
「そうか。ありがとう。参考になるよ」
「いえ、とんでもないです」
この子、本当に俺よりしっかりしてるんじゃないか?
しかし、キングってのが先なんだな。最後に出てきそうなもんだが。
どっちかが俺の家族を殺したのか。それとも他のやつなのか。
まあ、どちらにしろ倒さなければいけないんだが。
「今はママとラウル様、それにタマミ様の三人があたしたちの四天王です」
「一人足りないけどな」
一人足りないと聞いて、死神とベヒがまた喧嘩を始めた。
俺はいつものことになってきているからと放置することにした。
「しかしラーブ、他の四天王の情報も集められるような相手によく攻撃を当てたな。どうやったんだ?」
何か今後の戦闘のヒントになるかもしれない。
俺はラーブに戦闘のコツを聞くことにした。
「簡単だよ。攻撃される前に攻撃すればいいんだもん」
「簡単って言うけど、ラーブは元々戦闘職じゃないだろ。それに、モンスターを人間に変えるスキルとか信仰的に問題ないのか? 神官なんだよな?」
「問題ないよ。ね。神様」
「もちろん! 可愛ければなんでもOK!」
そういえば俺たちには神がついてるんだったな。
神が言うならなんでもありか。
しかし、攻撃される前に攻撃するは真理かもしれない。
食らうのは痛いしな。アルカを傷つけることになる。
見切れるなら見切るか。
「私だってみんなを強化してるからね!」
「どうした急に」
なぜかラーブに張り合おうとするタマミ。
「そりゃ感謝してるぞ二人とも。俺一人じゃどれだけボロボロになっても、アルカが傷ついてるなんて考えもしなかったかもしれない。それを気づかせてくれた二人には感謝してもしきれないくらいだ」
俺の言葉を聞いて二人はぼーっし出した。
「なんだ? 俺何か変なこと言ったか?」
「どしたの急に。そんなこと言っても何も出ないよ?」
「そうですよ。感謝してもしきれないなんて、そうそう言うもんじゃないですよ」
「いや、俺はただ感謝しただけだぞ? なんでそんな反応するんだ?」
まあ、二人のこれまでは知らないが色々あったのかもしれない。
信仰は強いらしいが、それと何か関係があるのだろうか。
それに、二人をダンジョンへ連れ去ったやつが、誰なのかもわかっていないし。
魔王を倒すついでに情報を得られるといいんだが。
「まあ、さっきラウルちゃんがいいとこ持ってったのは許してあげる」
「あ、それ私も思いました」
「別にそんなことしたつもりは」
「私がやるってんだから任せればいいのに」
「そんなわけにはいかないだろ?」
「作戦会議やってるとこ悪いが、強制終了だ」
幼女たちのリーダーの言葉通り、ガタイのいいやつがやってきた。おそらくキング・ドミニアーがだろう。
まだ距離はあるが、すでに俺たちを見下すデカさ。家か何かのようだ。
「ワシはこの時が来るのを待ってたんだぜぇ? 戦いは心が躍るからな。まあ、まさか相手が女子どもだけだとは予想もしてなかったがな」
少しくらい降参してくれることを期待してたが、やっぱり来たか。たとえ他のがやられていても俺たちを見て撤退する理由はないもんな。
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【あとがき】
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