第115話 地上へ出てみると・・


俺は神様の背中を見送ると、しばらくの間立ちつくしていた。

・・・

・・

衝撃が大きすぎる。

都市伝説じゃなかったのか?

地球外生命体だって?

そんな種族が地球の内部にいる。

それも俺たちが誕生する遥か以前から。

神様も言っていたが、恒星間旅行などできる文明だ。

地球の文明レベルでは話にならないだろう。


それに何となくわかったことがある。

ドラコニアンというのは、今のところ、文明レベル、身体能力においても最強種のようだ。

そして、その他の種族たち。

地球の文明よりは遥かに進んでいて、身体能力も地球人よりも高い。

爬虫類系などは人間をエサにしているくらいだ。

だが、そんな種族たちでもドラコニアンと戦おうなどという考えは微塵もないらしい。

別に媚びへつらうわけではないが、逃げるのでもなく争おうとはしない。


この地球にいた、似通った強さの種族同士では過去に争ったこともあったようだが、ドラコニアンが来た時にどこかへ行ってしまったようだ。

・・・

そして、俺が朧気おぼろげながら思ったこと。

どの種族も持ち合わせていない能力を付与するために、人間という種族を開発したのではないか、と。

『勇気』という気持ち。

無謀とも解釈できるが、自分が確実に死ぬ状況でも立ち向かえる気持ち。

どの種族も、ドラコニアンにはかなわない。

しかし、自分で意識しないレベルでも強者に服従し続ける不愉快さは残るだろう。

だから、そんな感情を埋め込んだ種族、人間種を開発したのではないだろうか?

また、そんな人間種がいれば、ドラコニアンに無謀に挑み、エサとなるために自分たちの種族も守られる。

・・・

・・

俺はその場でいろいろと突拍子もない考えを連想していた。


「え? あ・・神様は・・そっかぁ・・行ったのか」

俺は1人で考え込んでいたらしい。

『ハヤト様、大丈夫ですか?』

ベスタが聞いてくる。

「あ、あぁ、大丈夫だよ・・ただ、あまりにも凄い情報だったから・・」

『ハヤト様、これからはより一層あなた様のために私は死力を尽くします』

「あぁ・・ありがとう、ベスタさん」

それにしても、ドラコニアンか。

ダンジョンの最深部に位置しているみたいなことを言ってたな。

相手はいつでも地上と行き来できるが、こちらからは各階層を踏破しなければいけない。

それに、ダンジョンの階層がそのまま異種族の棲み分けにもなっているようだ。

・・・

取りあえず、8階層をチェックして地上へ帰ろう。


<〇〇ダンジョン地上>


10人程の、明らかに一般人とは思えない雰囲気をまとったグループがいた。

全員、左腕にトカゲかヘビか、何かのタトゥを刻んでいる。

「社長、このダンジョンが出入り禁止になっているところです」

社長と呼ばれた男、まだ30代前半だろうか、が表情を変えることなく、ダンジョン入口を見つめる。

・・・

「なるほどな・・話では、階層に似合わず、かなり高レベルな魔物が出るというが、本当か?」

「はい、ギルドの情報ではそうなっていますし、入った奴の話では浅い階層でも遭遇する可能性があるという話です」

「お前は入ったことあるのか?」

社長がジロッと見つめる。

「い、いえ、自分はこのダンジョンに入ったことはありませんが、つい先日も高ランクの素材が入手したという話を聞きました」

「・・そうか・・」

社長の言葉に男が汗を流していた。


「ふむ・・まぁ、行くか。 そのために戦闘員をそろえて来たんだからな。 貴重な魔石をゲットして金を稼ぐか」

「「「へい!!」」」

社長は思う。

全くもって、素晴らしい世界になった。

俺たちの力だけで世の中のルールを作っていける。

もう老害たちの言うことを聞かなくていい。

俺たちがルールだ。

上納金などと抜かしていた連中は始末した。

マジですっきりした。

だからと言って、無茶ができることもない。

戦闘員こいつらは完全に理解していないかもしれないが、警察力もレベルによって統制されている。

あまり逸脱した行動は、俺たちが危ない。

・・・

まぁ、程度次第だがな。

とにかく、こんなダンジョンで荒稼ぎするのが、今の所一番手っ取り早い。

どんなシステムになろうとも、金は必要だろう。


社長がいろんなことを思いながら、仲間と一緒にダンジョンに入ろうとすると、ポッと1人の男が入り口に現れた。

ダンジョン帰りのようだ。

!!

戦闘員たちが少し驚くも、バラバラと社長の方を向く。

社長が顎をクイッと動かして、指示を出す。

戦闘員の1人が、現れた男に近づいて行った。


「おっさん、このダンジョンは立ち入りが制限されてるはずだが・・何やってんだ?」

現れた男は、ハヤトだった。

8階層をマークし、地上へと帰還したところだ。

とても疲れている感じがする。

ハヤトの頭の中は、先程の神様の情報でいっぱいだった。


ハヤトは声をかけてきた奴を無視して、そのままゆっくりと歩いて行く。

無視というよりも、視界に入っていない感じだ。

声を掛けた男は、ハッとするも、ズイッとハヤトに近寄って肩を掴もうとする。

「おい、おっさん! 聞こえないのか・・」

男の手が、ハヤトの肩に触れそうになった瞬間、スルッと躱されてしまう。

男は肩に触れるはずだった手がどこにも触れられず、フラフラとよろめいた。

「クッ、おっさん! ちょっと待てよ!! こらぁ!!」

ようやくハヤトの耳に声が届いたようだ。

「あ、あぁ・・すまないな・・ちょっとボォーッとしていて・・」


「はぁ? このおっさん、何言ってやがる?」

次は違う男たちがハヤトを囲むように近寄ってきた。

「おっさん、いったいこのダンジョンに何の用があったんだ?」

「このダンジョンは立ち入り禁止だろう」

「フラフラしてんじゃねぇぞ・・」

・・・

・・

男たちは、今にもハヤトに襲い掛かりそうだ。

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