第81話 作業


ジョーは構わずにゴブリンたちに詰め寄る。

オーガキングを守るように3体のオーガがジョーの前に立ちふさがってきた。

「ゲへへ・・俺、人間を食べるのは久々だったんだ」

「あぁ・・この人間は生命力がありそうだ」

「食べると、俺の力が増えるかもな・・」

オーガたちは流暢に言葉を話していた。

ジョーは相手の状況など見てもいない。

自分の攻撃範囲に到達すると、迷わずロングソードを振るう。

ズバン!!


よく切れる包丁でキャベツを切ったようにオーガが輪切りにされた。

ジョーはそのまま一歩踏み出して、残りのオーガ2体を作業のごとく倒していた。

「「おおぉぉ」」

ジョーの後方でベン達が驚きの言葉をあげる。

明らかにみんな肩の力が抜けたようだ。


オーガキングがゆっくりと前に踏み出して、山積みにされた人間から1体をつまみ、口に放り込む。

バキッボキッと骨の砕ける音が聞こえた。

オーガキングが巨大なハンマーのようなものを取り出した。

「お前、俺の仲間を殺したな。 また仲間を増やさなければいけないが、これだけ食料があれば、すぐに増える」

ジョーは何も言わず、オーガキングを見つめる。

ドドン!

バン!

オーガキングから少し離れたところでゴブリン達が討伐されていた。


ケインたちが戦っていたようだ。

残るはオーガキングとクイーンとなる。

えさにしてはよくやる」

オーガキングは、焦るでもなくつぶやくと、巨大ハンマーを一気に振り払った。

ブォン!

ドッゴォォォン!!


ジョーの居た場所に直径5mくらいの窪みが出来ていた。

「フン、消し飛んだか・・」

オーガキングがサラ達の方を見つめる。

その視線を受けて、サラは不快な感覚を覚えるが無視。

すると、人の山の影からジョーが現れた。

「ん? すばしこいエサだな・・」

オーガキングが面倒くさそうにジョーの方へ向き直る。

「片腕で俺と対抗できると思っているのか」

オーガキングがまたもハンマーを振りかぶった。

今度はオーガクイーンも一緒に巨大ハンマーを振りかぶる。

ジョーのところに2つの巨大ハンマーが振り下ろされた。

今度は逃げれるような場所はない。

ギィィン!!

ハンマーが重なって、金属音の轟音が響く。


誰もがダメだと思ったことだろう。

土埃が舞い上がり、視界がさえぎられる。

・・・

朧気ながら土埃の中から光が漏れていた。

すぐにその光に包まれた人が現れる。

ジョーの身体が光っていた。

そして、無いはずの左腕が輝いて形成されていた。


オーガキングとクイーンがジョーを見つめる。

「な、なんだ? 腕が光っている・・確かに、片腕はなかったはずだが・・」

オーガキングが動揺しているようだ。

ジョーはそのまま両腕でロングソードを握り直す。

すると、ロングソードまでもが金色の光に包まれていく。

ジョーは作業をこなすように、オーガキングに向かって一歩踏み出す。

同時にロングソードを水平に薙ぎ払った。

オーガキングはかろうじて反応し、巨大ハンマーでロングソードの振りに合わせてガードをする。

オーガキングにしては最高の防御だったかもしれない。


だが、オーガキングの防御は意味をなさなかった。

ジョーの振るうロングソードが、光を纏ったままオーガキングをすり抜ける。

そのまま剣先の向きを変え、オーガクイーンに向かう。

ジョーの剣筋は、水平に往復した感じだ。

オーガクイーンの身体にも光の剣がすり抜ける。

剣が元の位置まで戻ると、ジョーはそのままロングソードを背負い直す。

オーガキングとクイーンの生存の有無など確認しない。

ジョーの勝利は絶対だからだ。

「ウグググ…ま・・さか・・人間ごときに・・あのお方は・・」

オーガキングとクイーンが何かつぶやいていたが、ジョーは人が詰まれている山が気になった。


ジョーが納刀した姿を確認すると、サラが駆け寄って来た。

「マイヒーロー・・その腕は・・あの・・大丈夫なのですか?」

サラが不安そうに聞く。

「サラ、問題ないよ。 は使っていない。 これはゴールデンボーイの能力だよ。 ありがとう」

ジョーの言葉を聞き、サラはホッと胸を撫でおろす。

人が積まれている山にゆっくりと近寄って行く。

ジョーは生死を確認する。

・・・

生きてはいないようだ。

ジョーは確認しながら、1人1人丁寧に地面に並べて行く。

他の同行者も駆け寄ってきて、同じように人を並べて行く。

・・・

・・

全員で21名いた。

誰も生きてはいないようだ。

そんな中、ジョーは1人の遺体の前で片膝をつけ、遺体の手を握っていた。

サラが近づいて行く。

「・・キース・・」

ジョーが静かにつぶやく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る