第73話 坂口団長と対峙


俺は坂口団長を見つめている。

笑顔でリラックスして構えているな。

俺も多少の武道の心得はある。

・・・

あの坂口って人、普通じゃない。

何て言うのか、隙がない。

俺が踏み込めば、すべてにカウンターが来るんじゃないかという感じだ。

・・・

だが、せっかく誘ってくれたんだ。

俺から行かなきゃ失礼だろう。


俺は意を決して前に出ようとした。

!!

目の前に坂口団長がいた。

俺の鼻先が団長の髪の毛の当たるんじゃないかという距離に!

直後、俺のボディに軽い衝撃がかかる。

同時に俺は坂口団長の右側に身体を避ける。

「クッ!」

俺の身体をカスッて、坂口団長の右腕が突き出されていた。

そしてその腕の周りの空間が揺らいでいるように見えた時・・。

俺が先ほどまでいた位置から、坂口団長が突き出した右腕に沿って爆音が聞こえた。

ドン!!


もし、俺が避けていなければ、どうなっていたんだ?

俺の居た場所に小さなクレーターが出来ていた。

坂口団長はニコニコしながら話しかけてくる。

「村上さん、凄いです。 僕の踏み込みに気付いて、しかも躱すなんて・・普通はあのままわからずに終わりなんですがね」

た、確かに、終わりだろうな。

気付く前にやられている感じだ。

「やはりレベル差かぁ・・」

坂口団長がつぶやくように考えている。

「村上さん、僕のレベルは28なんですが・・あ、29になったかな? ま、どうでもいいや。 それ以上のレベルってことですよね・・基礎能力では僕の方が上だと感じたのですが・・レベルか・・やっかいだな」

坂口団長がブツブツとつぶやきながら考えていた。


「ベスタさん、あの団長ってヤバいんじゃないのか?」

俺はベスタに聞いてみる。

『そうですね、身体能力はハヤト様よりも上位です』

!!

おい、ベスタさんよ、はっきりと言ってくれるよな。

へこむ暇がないぞ。

だが、あの攻撃・・明かにスキルだよな。

俺のスキルって、プリーストと神眼、後はベスタさんだけだぞ。

確か未来予測的なものもあったと思ったが、避けれたのってそのおかげか?


とにかく、って、初めて体感する。

一言、恐ろしい。

もし、レベルが同じなら終わっている・・よな。

というか、戦いの最中にこんな考えが浮かぶだけで、既に負け試合だ。

俺は軽く頭を振り、坂口団長を見つめる。


坂口団長はニコニコしながら待ってくれていたようだ。

身体を軽くブラブラとすると、俺に話しかけてくる。

「村上さん、先程の攻撃を見切れるようなので、少し力を試させてもらいます」

「え?」

坂口団長は俺の返答を待つことなく、何やら集中していた。

ヒィィン・・という音が聞こえるような気がするくらい、周りの空気が張りつめて行く。

「な、なんだ?」

俺は意味もなくつぶやく。

!!

ドォォーーーーン!

いきなり雷が坂口団長に落ちた。


坂口団長を青白い光が纏っている。

そして、バチバチと電気を帯びているような感じだ。

!!

俺はその姿を見ていたはずだ。

全くわからなかった。

俺のお腹に坂口団長の右の掌が触れていた。

い、いったいいつの間に・・というか、その間すらなかったのか・・。

そのままスッとお腹を撫でるように、坂口団長の右手が内側に捻じられる。

すると、坂口団長が俺の前から消える。

俺の背中に何やら人の気配がある。

俺はそれを感じた瞬間に、今まで味わったことのない衝撃を感じた。


俺の背中に丸太で殴られたような衝撃と、お腹の方ではドリルを捻じり込まれたような痛み。

それを同時に味わわされた。

その痛みを感じつつ、俺は四つん這いになる。

吹き飛ばされることを許されない。

単純に衝撃をすべて背負わされているような重さだ。

痛みや苦しみよりも、重い。

地面しか見えないが、意識は何とか保つことができていた。

俺のスキルで回復しているからだ。

俺は片膝をついて、なんとか坂口団長を見る。

坂口団長が半身はんみの姿からゆっくりと自然体に戻っていく。

・・・

なるほど・・俺の背後で・・八極拳の鉄山靠てつざんこうのようなものを打ち込まれたらしい。

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