第19話 さすがダンジョンか


しばらく歩くと、またもゴブリンと遭遇。

3匹いるようだ。

まだ向こうは気づいていない。

それにゴブリンの上空にコウモリのような集団がいた。

俺が意識してそれらを見ていると、ナビが教えてくれる。

『ハヤト様、あれはバットです』

「バット?」

『はい、コウモリの一種ですね。 超音波などを使って攻撃してきますが、感覚を狂わせる程度で攻撃力はありません。 ゴブリンよりも低位の魔物です』

ナビが詳しく説明してくれた。

「ナビ・・よく知っているな。 それに、何か活き活きとしてないか?」

『ありがとうございます。 お役に立ててなによりです』

「い、いや・・回答になってないのですが・・」

俺の接近に気づいたらしく、ゴブリン達がニヤニヤしながら近づいてきた。

バットもキュッキュッキュッと甲高い声のような音を出しながら迫って来る。

なんかうっとうしいな。

ん?

バットは俺だけじゃなく、ゴブリンたちにも同じように接近している。

ゴブリンも嫌がっているようだ。

・・・

何ともコメントのしようがない。

俺は遠慮なくゴブリンに攻撃を加える。


完全に無防備なゴブリン。

一撃だ。

『レベルが上がりました』

頭の中に天の声が響く。

「え?」

俺は天の声を聞きつつも、前方の残るゴブリンに集中。

だが、簡単に狩れてしまった。

まとめて3匹を倒し、鉈を空中でブンブンと振るっていると、バットにも当たる。

バタバタとバットが落下していく。

・・・

『レベルが上がりました』

「え?」

いきなりレベルがまた上がった。

どういうこと?

俺がそう思うと、ナビが答えてくれる。

便利だな。

『ハヤト様、先程のゴブリンの中に上位種のゴブリンがいたようです』

「上位種?」

『はい。 おめでとうございます』

ナビは簡単に言う。

俺はうれしさよりも少々呆れてしまった。

大丈夫か?


<中国>


広い、大きな部屋で大きな机を囲み10人程の男たちが座っている。

1人の恰幅かっぷくの良い男が声を出す。

「あのアメリカの超人だが、わが国にはいないのか?」

「今、国内を捜索中です」

「13億人もいるのだ。 相当な数の人間がいるだろう」

「うむ。 私もそう思っている。 我が国が世界の中心であらねばならない」

「愚民どもに人のあるべき姿を示してやらねばな」

「うむ。 資本主義などと、自由と無法の区別もつかない連中ではないか」

「先ほど、ロシアからの報告でもあったが、まだロシアでも見つかっていないという」

「フフフ・・嘘だろう。 あの国は隠しているだけだ」

「全くだな」

「我が国も超人たちを整えねばならん」

「うむ」

会議と呼べるのかどうか。

好き勝手に会話を楽しんでいるようだ。

そんな中、部屋の扉がゆっくりと開かれた。

1人の男が入って来る。

そのままこの部屋の一番権力のあるもののところまで歩いて行く。

1枚の紙を見せていた。

男はだんだんと顔が緩んでくる。


紙を提示した男は大きく頭を下げると、そのまま部屋を退出していく。

その退出を確認すると、紙を持ったまま男が言葉を出した。

「諸君、喜んでくれ。 我が国にもいたようだ。 今わかっているだけで30人以上だという。 全員に招集をかけているところだ」

「「「おお・・さすがだ」」」

場の雰囲気が明るくなった。


<ハヤト>


俺はレベルを確認する。

一気に2つも上がったからな。


ハヤト

レベル:8

HP :90/90 

SP :87/87 

力  :131    

耐久 :112   

敏捷 :135    

技能 :119   

運  :62   

スキル:ナビ7

    見切り5


なるほど。

結構上がっているんだな。

レベルっていったい普通の人はどれくらいなのだろうか。

格闘家なんてすごいんじゃないか?

俺はそんなことを思ってみる。

『ハヤト様の種族の一般レベルですが、どれほど強くてもレベル4あたりかと思われます』

ナビが勝手に答えてくれた。

・・・

もはや何も言うまい。

「そ、そんなものなのか。 ということは、俺は人の存在を超えたということか」

俺は複雑な気持ちになる。

嬉しいような怖いような。

『ハヤト様、それは違います。 超えているのではありません。 成長です』

ナビが言う。

成長ね・・そういうものかな。

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