第18話 こんなものなのか?
なるほど、ナビによる補助があるなら大丈夫そうだな。
俺は前方のゴブリンを見つめる。
遭遇したのは1匹のゴブリンだった。
片手にキラキラと光るナイフを持っている。
目つきは爬虫類系のそれを思わせる。
会話は望んでいないが、情けなどという言葉は知らないだろうと感じられる。
「ギッ!」
ゴブリンがいきなり俺の方を見た。
「ギッギッギッギ!」
ナイフを振り上げて、ニヤニヤとしている感じがする。
すると、いきなり俺に襲い掛かって来た。
!!
俺は、一瞬驚いたが、イノシシと比べるまでもなく遅すぎる動き。
飛び込んでくるゴブリンに合わせて、鉈で思いっきり振り払う。
ドン!
ゴブリンに命中し、吹き飛ばした。
ゴブリンは飛んでゆき、壁に激突。
「ギッギッギ・・」
うつ伏せになったまま、何やら呻いているようだ。
「こ、このゴブリン・・いきなりだったな・・かわいそうだが・・いや、全然かわいそうじゃないな」
俺は近づいてゆき、そのままゴブリンに鉈を振り下ろす。
ドン!
ゴブリンは動かなくなった。
『ハヤト様、さすがです』
ナビが褒めてくれる。
だがなぁ・・ゴブリンを狩って褒めてもらうって・・まだ俺には慣れてないな。
『ハヤト様、そのうち慣れてきます。 それよりも、ゴブリンをもう2~3体倒しますと、レベルが上がりそうです』
「マ、マジか? そりゃ、効率がいいな」
『はい、ゴブリンのレベルは5くらいですからね。 ちょうどハヤト様に適しているかと思われます』
「は?」
俺はナビの説明に驚く。
「ナ、ナビさん・・レベル5って・・俺と1つしか違わないじゃないか。 それって間違えたら、俺がやられるってことだよね?」
『ハヤト様、問題ありません』
ナビは俺がやられるなどとは微塵も考えていないようだ。
「はぁ・・ほんとに大丈夫なんかねぇ・・」
俺は不安になる。
『ハヤト様、次が迫ってきてますよ』
ナビの言葉に俺も気を引き締める。
前方に、確かに何かいる気配を感じる。
ギッギッギッという小さな声が聞こえた。
通路は真っすぐではない。
適度に曲がったりして、それなりに身を隠すような場所がある。
俺は岩陰からその声の方を見つめる。
・・・
なるほど、確かに先ほどのゴブリンと同じ種類のようだ。
3匹が何やら話をしながら歩いてくる。
俺が見つめていると、ナビが話しかけてくる。
『ハヤト様、恐れることはありません。 楽勝です』
「・・・」
俺は言葉を失う。
俺ってバトルジャンキーじゃないぞ。
それにナビって軽くない?
対生物バトルなんて、俺の人生で一度もないぞ。
イノシシが初めてだったし、さっきのゴブリンだって初見だ。
『ハヤト様、このダンジョンですが、おそらく10階層くらいで構成されていると思われます』
ナビが俺に言う。
俺はまだ岩陰でゴブリンの動きを見ていた。
まだ遭遇までには時間がある。
「10階層?」
『はい、おそらくですが・・ダンジョン自体が成長しますし、確定とはいきませんが、それくらいの規模だと思ってくださればよろしいかと』
「じゃあ、今の魔物よりも遥かに強い魔物もいるってわけだな」
『はい、その通りです』
「はぁ・・大丈夫かよ」
俺は不安さしかない。
『ハヤト様、ダンジョンは無理さえしなければ、問題ありません。 それに私がついております』
ナビがどうだ! と言わんばかりだ。
「り、了解しましたよ、ナビさん」
なんか、戦う前に疲れてきたな。
俺は気持ちを切り替える。
ゴブリンを見つめながら、やつらはイノシシだと自分に言い聞かせる。
・・・
「よし!」
俺は覚悟を決めると、岩陰から飛び出してゴブリンの集団に向かう。
3匹のゴブリンが当然俺に気づく。
ギッギッギッとお互いに言葉を出しながら、ナイフを構えていた。
俺は遠慮なく一番近いゴブリンめがけて鉈を振るう。
「フン!」
ゴブリンは反応できていないようだ。
ゴブリンの頭に鉈が直撃。
そのまま地面を転がって行く。
俺は鉈を返し、隣のゴブリンに向かって同じように水平に振るった。
ドン!
更に方向を変えて残りのゴブリンに鉈を叩き落す。
ドン!
思うようにゴブリンにヒット。
・・・
慢心しているわけではないが、かなり楽に倒せた。
しかも一気に3匹も。
俺は鉈を手に少し放心状態だ。
『ハヤト様、問題なかったでしょ』
ナビが語りかけてくる。
「そ、そりゃ・・な。 でも、こんなものなのかな?」
俺には自信がない。
『はい、こんなものです』
ナビはきっぱりと断言する。
俺はそのままゆっくりと奥へと進んで行った。
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