第17話 ダンジョン?


ナビが言うには、歪みのところに稀に隙間みたいな空間が出来るそうだ。

その時に、低級な魔物が飛び出ることがあるらしい。

レベルの高い魔物が出ることはないという。

ほんとか?

俺の記憶にあるような物語や伝説では、大変な厄災があるように思うのだが・・。


『ハヤト様、そういった厄災の時には結界が壊れたのだと思われます』

ナビが答えてくれる。

・・・

『ハヤト様、どうされますか? いつでも入れますが』

ナビが気軽に聞いてくる。

今さらながら何をビビっているんだ、俺は。

「中に入って、死ぬってことはないよな?」

『そりゃ、ありますよ。 死のリスクは付きまといます』

ナビがはっきりと言う。

「・・ナビさん・・俺で大丈夫なのかな?」

『ハヤト様、それはわかりません。 ですが、ダンジョン以外でレベル上げは難しいと考えます。 それに私がついております』


わかりませんって・・。

俺は少し迷ったが、初めからこのために来たんだ。

・・・

覚悟を決めてナビにお願いした。

「ナビ、よろしく頼む」

『はい、お任せを。 ではハヤト様、そのまま手を前に伸ばしてください』

ナビの言うままに、手を伸ばすとスッと景色が変わった。


薄暗い空間が広がっている。

俺はキョロキョロと辺りを見渡す。

見えにくいわけではない。

何か、色が薄い感じがする。

「ナ、ナビ・・これが、ダンジョンなのか?」

『はい、間違いありません。 ○○神社の持つダンジョンですね』

「え?」

俺は意表を突かれた感じだ。

「ナ、ナビ・・この神社が持つって・・じゃあ神社ごとにというか、遺跡ごとにダンジョンが違うのか?」

『はい、同じようなダンジョンはないと思われます』

ナビの説明を聞きながら思う。

どうせダンジョンなんて代物は初めてなんだ。

どんなタイプでも体験していく以外にないだろう。


「ナビ・・再度確認するけど・・やっぱ、死ぬこともあるんだよな?」

俺の中に残る不安さを確認せずにはいられない。

『はい、もちろんです。 死ねば終わりです。 私もハヤト様とお別れになってしまいます。 残念です』

「ちょ、ちょっと待て! 俺、まだ死んでないし・・不安にさせるなよ」

『失礼しました。 冗談です。 ハヤト様、私がいる限りご安心くださいませ』

ナビが力強い言葉をくれる。

「ありがとう、ナビ」


さて、初めてのダンジョン。

地下迷宮をイメージしていた。

確かに、そう言われればそう感じる。

何かの閉鎖空間という感じだ。

だからと言って狭いのかと言われれば、大きさがよくわからない。

ただ薄暗い。

見えないほどではない。

なんと言うか、鍾乳洞のようなところと思ってもらえればいいだろうか。

もしかしたら、秋芳洞なんかも案外ダンジョンとつながっていたりして。

俺はそんなことを思ってみたりした。


「ナビ、ダンジョンに出る魔物だが、やはりゲームみたいな仕様なのかな?」

俺は聞いてみる。

『そうですね・・その考えて間違いないと思います。 おそらく人の思考・創造はどこかで共有されているのかもしれませんね』

なるほど。

俺はナビの言葉に納得。

確かに、悪魔など日本では見たこともない。

だが、画像を見せられれば悪魔だとわかる。

何故わかるんだ?

知らないはずだろ?

その根底に何かあるのだろうな。

俺はゆっくりと歩きながら考えていた。


『ハヤト様、遭遇しますよ』

ナビが教えてくれる。

俺は鉈を片手に気を引き締める。

前方に何やらナメクジのようなウネウネした大きな塊がうごめいていた。

「な、何だ・・あれは・・」

俺は思わずつぶやく。

『ハヤト様、初級魔物のスライムです』

「ス、スライム? あれがか?」

『ハヤト様、侮ってはいけません。 個体によって様々なタイプがあります。 酸を吐くタイプもいますので、ご注意を』

「は? いきなりレベルが上がってるんですけど・・」

『大丈夫です。 特に刺激しない限り、相手から攻撃を仕掛けてくることはありません』

俺はナビの言うことを信じるしかない。


スライムをスルーして奥へと進んで行く。

「ナビ・・迷子にならないよな?」

『大丈夫です、ハヤト様』

・・・

ダンジョンに入って10分くらい経過しただろうか。

どれくらい歩いたのかよくわからない。

ただ、ゆっくりと移動している。

前方で何か影が揺れたような気がした。

俺はスッと岩陰に身を潜める。

『さすがです、ハヤト様。 ゴブリンですね』

「ゴブリンか・・」

俺の腰くらいまでの大きさだろうか。

鼻が細長く口が大きく耳元まで裂けているように見える。

昔、こんな感じの妖怪の話があったよな?

口裂け女だっけ?

俺はそんなことを思ってみた。

『ハヤト様、ゴブリンを倒しますと、かなりの経験値になると思います』

「マジか! って、イノシシより強いのかな?」

『全く問題ありません。 イノシシの方が遥かに強いです』

ナビがきっぱりと答えてくれる。

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