第30話 (3)自主練習とメッセージ

 自宅に帰ると制服からジャージに着替えて、庭に出て竹刀の素振りをおこなった。

 途中、母親からもうすぐ食事になるといわれて、シャワーを軽く浴びて汗を流したあと、食事を済ませると、腹の中の物が消化しきったころジャージに着替えてジョギングに出た。


 剣道でも走るのは基本だった。

 試合で使う体力は半端じゃない。

 それに踏み込むためには跳躍力が必要となってくる。

 そのふたつを補うのにジョギングは最適なのだ。


 一時間ほど走って、少し休憩をした後、また一時間走る。

 ジョギングを終えたあとは、家で素振りを三百回行う。

 それで家でのトレーニングは終了する。


 あとは風呂に入って、宿題があればそれを終わらせて寝るだけ。

 トレーニングを行った後は、決まってぐっすりと眠れた。

 逆に行わないと眠りが浅く、朝までに何度も目が覚めてしまったりするぐらいだ。


 風呂から上がって自分の部屋に戻ると、スマートフォンにメッセージが届いていた。

 メッセージの送り主は、石倉さなえだった。


『日曜日だけど、東京の学校と練習試合をするらしいね。見に行っても大丈夫かな?』


 メッセージを読み終えたおれは、まず疑問にぶつかった。

 どこで日曜日の情報を仕入れたんだよ。発表されたのは今日の練習終わりだぜ。

 誰か、石倉と親しい剣道部員っていたっけ。

 そんなことを思いながらも、返事を打つ。


『よく知っているじゃん。日曜日は東京のM学園と練習試合。うちの体育館でやるから、別に見学とかしてても構わないと思うけど』

 返事を打ち終えてメッセージを送信すると、五分も立たないうちに返事が来た。


『本当に? よかった。それじゃあ、日曜日に見学しに行っちゃおう』

 メッセージを読みながら、石倉さなえが喜んでいる姿が想像できた。

 石倉って笑うと左の八重歯が見えるんだよなあ。

 そんなことを考えながらベッドの上でゴロゴロとしていると、いつの間にかおれは眠ってしまっていた。

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