運命ってのは、自分が…【拓夢】

下に着くと、笹塚さんが着いていた。


「今日から、相沢に代わってお世話になります。笹塚十地ささづかとおじです。よろしくお願いします」



「よろしくお願いします」


笹塚さんは、50代ぐらいだろうか?白髪混じりの頭に眼鏡をかけていて、凄く優しい印象だった。

俺達は、笹塚さんの運転する車に乗り込んで撮影場所に連れて行ってもらう。


「到着しました」


「ありがとうございます」


そこは、海だった。二曲目の曲にふさわしい場所の気がする。


俺達が車を降りると何故かもういないはずの相沢さんがいた。



「あれ?今日って来る予定でした?」


かねやんが不思議そうな顔をして相沢さんに言った。


「いや、予定じゃないよ」


「じゃあ、何で?」


「ちょっとね」


相沢さんは、そう言うと俺とまっつんを呼んだ。


「何ですか?」


「ちょっとついてきてくれるかな?」


そう言われて、俺とまっつんは相沢さんについていく。


暫く歩いて、車の前で止まった。


「松田君、星村君」


「はい」


「運命って、自分で引き寄せるものだって知ってた?」


「えっ?」


俺とまっつんは、意味がわからなくて顔を見合わせる。


相沢さんが車を開けた。真っ赤なドレスを着た人が先に降りてきた。


「り、凛」


俺は、驚いた顔をして凛を見つめる。凛は、俺に笑ってからまっつんの傍に行った。


「何ですか?」


「はい、これ」


そう言って、薔薇の花束を凛はまっつんに渡した。


「これ、何?」


まっつんは、意味がわからないって顔をしていた。


凛が俺の隣に立った頃に、かねやんとしゅんもやってきていた。


相沢さんは、かねやんとしゅんと凛に何かを渡した。


「星村君もね」


そう言われて渡されたのがクラッカーである事に気づいた瞬間だった。車から、真っ白なウェディングドレスを着た理沙ちゃんが降りてきた。


「えっ?理沙」


まっつんは、理沙ちゃんを見て泣いていた。


「ほら、松田君」


相沢さんは、そう言ってまっつんの肩を叩いた。


その花束が何を意味しているのかをまっつんは、すぐに理解してその場にひざまづいた。


「これから先も、俺といると嫌な事の方が多いと思います。それでも、いいのなら…。もう、世間なんてどうでもいいから…。俺と結婚してもらえませんか?」


まっつんは、泣きながら精一杯そう言って花束を理沙ちゃんに差し出していた。


「はい」


そう言って、理沙ちゃんは花束を受け取った。


『おめでとう』


パン、パン、パンと乾いたクラッカーの音が響き渡る。


「何で、こんな」


まっつんは、そう言って泣いていた。相沢さんは、俺達全員を見つめて話す。


「別れる運命とか売れない運命とか、そんなのないんだよ。運命ってのは、こうやって自分で作るもんだから!」


そう言って、相沢さんは、まっつんの肩を叩いた。


「相沢さん、俺…」


「結婚しなさい!世間の雑音なんて無視して、理沙さんと幸せになればいいんだよ。松田君」


そう言って、相沢さんは笑った。


俺は、初めて見た気がした。運命を自分で作る瞬間を…。


それなら、SNOWROSEだって自分で作れるんだ。


「拓夢、よかったね」


凛は、そう言って俺を見つめていた。


「凛、相変わらず綺麗だね」


俺は、凛にそう言って笑った。


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