しゅんのお兄ちゃん
お風呂から上がって、俺は洗面台の鏡の前に立っていた。凛と過ごした日々をここにいるだけで、思い出せる。
髪を乾かして、服を着る。洗濯機に洗濯物を入れてスイッチを押した。
「さてと…」
俺は、リビングに行くとキッチンの蛇口を捻って水を出して飲んだ。
「何か、今日はめちゃくちゃ疲れた」
大きなあくびをひとつした。冷蔵庫を開けると、凛と作ったハンバーグが存在している。
「今日は、これ食べて寝るか」
俺は、ハンバーグを温める。凛が、帰宅してまだ一日しか経っていないとは思えないぐらい寂しい。人間って、目の前にいる人の言葉を聞けなかったりするから不思議だ。凛は、ずっと旦那さんの言葉を聞けなかったんだよな。
グツグツと鍋に入れたハンバーグが揺れるのを見ていた。
俺も昔は、両親の言う言葉を聞けなかった。離れてからは、すんなり聞けたのにな!
お前に何がわかるんだよ!ずっとそう思ってた。
「はぁー」
俺は、大きなため息をついた。相沢さんの話で、しゅんのお兄ちゃんがいなくなって皆で探しまくった日を思い出した。まだ、自分が何者かもわかっていなかったからかしゅんのお兄ちゃんは苦しんでいた。今は、どうなのかわからない。
「でも、今は今で悩んでるんだろうな」
俺は、火を止めてハンバーグを皿に入れる。
お箸とビールを取ってダイニングに行く。
しゅんのおばさんは、お小遣いで口紅を買ったしゅんのお兄ちゃんを責めた。
「いただきます」
俺は、ビールを開けてハンバーグを口に入れる。
「あっつー」
ハフハフとしながら食べる。あの口紅のせいで、しゅんのお兄ちゃんはいなくなった。見つけたのは、真夜中で…。俺達は、7時間も探した。
「僕がいなくなったって世界は変わらないと思ったのに…」
足がパンパンで、引きずりながら歩いた俺達を見てしゅんのお兄ちゃんはそう言った。
あれからは、消えたいとは言わなかったし、いなくなったりもしなかった。
「赤ちゃん欲しいのかな?」
俺は、ゴクッとビールを飲んだ。もしかすると、凛みたいに赤ちゃんが欲しいって思ってるかも知れないと思った。
俺は、スマホを見つめる。さっきの掲示板を検索する。
【SNOWROSEは、ヤバイ奴等の集まりらしい】
「はあー」
こんなの読むなって思うのに見てしまう。
やっぱり、これって凛と駅で抱き合った日の写真だよな。何で、こんなのが撮られた?
凛にちゃんと連絡しなきゃいけないよな。この写真の事、旦那さんが知ったら不味いよな。
ブー、ブー
俺は、スマホを見つめていた。電話がかかってきたのがわかってとる。
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