エピローグ【拓夢の話4】

相沢さん…

俺は、まっつんに支えながら戻ってきた。


「おかえり」


相沢さんは、俺とまっつんを見てそう言った。


「すみません」


「星村君、顔色悪いけど大丈夫?」


「あっ、はい」


俺は、そう言ってお辞儀をした。


「なら、いいんだけど…」


そう言われて、俺達は車に乗り込んだ。


「相沢さんが運転ですか?」


「うん!そうだよ」


相沢さんは、ワンボックスカーを運転している。


「松田君と星村君は、色々ネットでも書かれてただろ?結構、心配してたんだよ」


「はい」


「人って好きな事、平気で書くだろ?特に、Artemis《アルテミス》のファンは、結構、叩いたりするって有名だから…。こっちとしては、SNOWROSEが傷つかない方法を考えてるんだ」


「はい」


まっつんだけが、そうやって返事をしていて。俺は、ずっと上の空だった。


「明後日のレコーディングはこれそう?」


「はい」


「星村君は?」


「えっ、あっ、大丈夫です」


俺は、本当に相沢さんの話を聞いてなかった。


「星村君、もしかして、疲れた?」


「あっ、はい」


凛に会いたくて堪らなかった。


「あのー。さっきの写真」


「あー。さっきの写真何枚か欲しかったりする?」


「はい」


まっつんは、相沢さんにそう言って笑っていた。


「オッケー。事務所についたら渡すよ」


「はい」


まっつんは、ニコニコニコニコ笑っていた。俺は、凛を思い浮かべていた。凛がいない世界なんていらなかった。


事務所について、車から降りて上がる。会議室で、相沢さんとまっつんは二人でパソコンを見ていた。欲しい写真をまっつんは、指差しているようだった。


「じゃあ、帰ろうか、拓夢」


「あっ、うん」


まっつんに声をかけられて、我に返る。俺は、相当重症だった。


「お疲れ様」

相沢さんに見送られて、事務所を後にした。


まっつんと並んで駅まで歩く。


「拓夢、大丈夫か?」


「えっ、ああ!うん」


「さっきから、何だよ!歯切れ悪いし」


「ごめん」


まっつんは、やれやれと首を横に振った。


「凛さんとの事、お互いに決めたんだろ?」


「うん」


「だったら、何で!ずっと上の空なんだよ」


俺は、まっつんに何も答えられなかった。


「拓夢、選んだの後悔してるか?」


駅についてまっつんは、切符を買ってる。


「はい」


「ありがとう」


「いや」


俺達は、改札を抜ける。後悔してる何て言ったら、まっつんは悲しむだろう。だから、俺は何も言えない。


「あのままの関係。一生続けるとか無理だってわかってんだろ?」


まっつんは、階段を降りながらそう言った。


「それでも俺は…」


続けたいって言いたくてやめた。


「応援は、したいよ!だけど、もうそれは違うだろ?」


まっつんの言葉に俺は頷いた。応援が出来るのは、夢を実現するまでだってまっつんは、きっと言いたいんだと思った。

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