服を選びに行く
俺と凛は、階段を上りきった。改札に辿り着いていったん手を離して改札を抜けた。俺は、またすぐに凛の手を握りしめる。俺達は、並んで歩きだす。
「さっきの椅子に座ってた人。嫌だったんだよね。私達の事」
凛は、駅を抜けるとそう言ってきた。
「咳払いしたりしてた人?」
俺の言葉に、凛は「そうそう」と頷いていた。
「不愉快そうにしてたなー。確かに…」
「拓夢が私を支えてくれてるのが、きっと嫌だったんだろうね」
凛の言葉に、俺はボソリと「変なDVD見すぎなんじゃないか…」と呟いていた。
信号で止まる。凛は、目を大きくして俺を見つめている。
「何?」
「さっきの独り言だった?」
俺は、自分が発した言葉を気づいてなかった。そう言われて、頭で思っていた言葉を口に出していたのがわかった。
「あー、ごめん」
思い出すと急に恥ずかしくなってきた。
「確かに、そういうシリーズあるもんね」
凛は、嬉しそうにニコニコ笑って俺を見つめる。
「知らないよ!見た事ないし」
俺は、そう言って凛を見つめる。
「へー、そっかぁ!」
凛は、疑いの眼差しを俺に向けるように笑う。
「本当だって!そういうのは、興味ないから!俺は、そういうのは違うから…。だから、見てないよ」
俺は、必死で凛に否定する。その必死さが逆に怪しさを助長する。
「いいよ!もう。信号渡ってすぐだって」
凛は、そう言って気にしてないからって顔をしている。嫌、今のじゃまるで俺は、凛と電車でそうしたかったように聞こえたんじゃないだろうか?現に、行きの電車で俺は凛にキスをしていた。確かに、公共の場所で、いつ誰かに見られるかわからない気持ちにドキドキはした。でも、だからって、あんな満員電車でどうにかしようなんて癖はない。
「ここだね」
凛と一緒に、スーツが売ってる店にやってきた。家に帰ってから、ちゃんと話そう。
「ネクタイ選んでよ」
俺は、気にしないように凛の手をひいてお店に入る。今は、兎に角二人の時間を大切にしたい。
「いらっしゃいませ」
店員さんは、俺と凛に深々とお辞儀をしてくれた。店内には、もう、冬物が沢山並んでいる。
「拓夢、どんなのがいいの?」
「そうだなー」
沢山のスーツが並んでいる。俺は、凛と一緒に奥へと歩いて行く。
そこには、華やかな場所に行く為のスーツ、カッターシャツ、ネクタイ、小物が並んでいる。
「これ、綺麗だね」
瑠璃色のネクタイを凛は、見つめていた。何で、ここに来たかな…。さっきまで、いなかった
「拓夢、どうしたの?」
「いや、別に」
凛は、俺の顔を見つめながらネクタイを選んでくれてる。
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