俺達を見つめる視線…
別に持てるように手すりがついてるわけだから、嫌な顔をされるのはおかしいだろ?俺は、そう思いながら男を見つめていた。
男は、イライラしているのか貧乏ゆすりをしている。隣に座る女の人が不快感を募らせながら男を時々見つめている。早く駅につかないかな…。俺は、そう思っていた。
「ごめんね」
凛は、上目遣いで俺を見つめてそう言った。
「謝らなくていいよ」
俺が、凛にそう言うと何故か男は、チッと舌打ちをする。何だよ!わけわかんないわ…。別に何もしてないだろ?この場所で、凛と変な事をしてるわけでもない。俺は、凛を支えてるだけで、別にキスをしてるわけでも、イチャイチャしてるわけでもない。
俺は、男と何度も目が合う。男は、今時の若者はと言いたそうな顔をしてる。
ガタン…。また、電車が揺れる。
「すみません」
俺達の隣に立っているサラリーマンが凛にぶつかって謝ってくる。
「大丈夫です」
凛が、そう言うと彼は驚いた顔をして凛を二度見した。凛が、綺麗だからだと思った。俺は、それに焼き餅を妬く。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫、大丈夫」
わざとらしく凛に話しかけると彼は、こっちを見ないように右下に目をやっていた。早く止まってくれよ。俺は、この電車に乗った事を後悔していた。
【次は、……。……です】
車内に、アナウンスが流れる。ようやく、ここから抜け出せるとホッとしていた。
プシュー
俺達がいる扉側が開いた。
「気をつけて」
「うん」
凛は、ゆっくりと電車から降りる。男と目が合うとようやくいなくなるって顔を向けてくる。隣のサラリーマンは、少し残念そうな顔をしていた。俺は、それを無視するように降りる。
「やっと解放された」
「確かに、凄い人だったね」
ホームに降りると、俺はすぐに手を繋いだ。
「やっぱり、帰宅ラッシュって凄いな」
「うん」
俺達が降りた場所に、サラリーマン二人が乗り込んでいく。
プシュー
電車は、いなくなった。
「さっき、凛に肩がぶつかったサラリーマン。凛の事、綺麗だって思ったよ」
俺の言葉に、凛は「まさか」って言って笑った。
「本当だよ!だって、二度見してたから」
「おばさんが、若い子と付き合って痛いって見てたんじゃない?」
凛は、そう言いながら笑ってる。
「そんなわけないよ!あれは、めっちゃ綺麗な人だって顔だよ。現に、彼は俺と目を合わせないようにしてたし」
俺は、凛の手をギュッと握りしめて、口を尖らせるように話した。
「何で、拓夢が怒ってるの?」
凛は、そう言いながら首を少しだけ傾げて俺を見つめる。
「怒ってないから」
二人で、階段を上がってく。
「なら、いいんだけど」
凛は、そう言って指をギュッと握り返してくれる。俺は、きっと、凛を見つけられた事がきっと嫌だったんだと思う。
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