どんな風に?

「凛、しようか?」


「いいよ」


「お風呂入ろうか」


「うん」


拓夢は、立ち上がってお風呂にお湯をためにいく。私は、TVをつける。大きな音をすぐに小さくする。私が苦手な、それをTVの中の女優さんはやっている。


「はぁー」


大きな溜め息が出た。私に出来るのだろうか?


ガタッて音が聞こえて、私は慌ててTVの電源ボタンを押した。


「お湯いれてきた」


「ありがとう」


「まだ、たまってないけど」


「時間かかるね」


「TV見てた?」


「ううん」


「嘘つき」


私の嘘は、すぐにバレた。


「どうして?」


「リモコンの位置かな?」


「凄い、拓夢」


「凄くない」


拓夢は、私の唇を撫でる。


「どんな風に旦那さんに抱かれる?」


「そんなのチャチャチャだよ」


「それは、嘘」


拓夢は、私の頬に手を当てて顔を引き寄せる。


「どうして?本当だよ」


「今は、違うだろ?それは、妊活してた日々だろ?どんな風に抱いてくれる?」


拓夢は、私のTシャツの背中にゆっくりと手を這わせていく。


「駄目」


ビクッと体がするのがわかる。


「じゃあ、教えて」


「意地悪しないで」


拓夢は、私のブラジャーを外した。


「じゃあ、教えて!どんな風にしてくれる?」


龍ちゃんは…。


龍ちゃんは、どうしてくれるんだっけ?


「龍ちゃん」


「龍ちゃんじゃないから」


「ごめんね」


拓夢は、触るのをやめて立ち上がった。龍ちゃんの事を考えたせいで、龍ちゃんって口に出してた。


「拓夢」


私を見ずにお風呂場に消えていく。私は、立ち上がって拓夢を追いかける。


「拓夢、怒った?」


拓夢は、お風呂のお湯を止めてる。こっちを見てくれない。


「拓夢、ごめんね。怒らないで」


私は、拓夢に抱きついた。


「怒ってないよ」


拓夢は、私の手を握りしめる。


「龍ちゃんと比べたくない。拓夢は、拓夢だから…」


指を絡ませて手を握りしめられる。


「凛の中にいるのは、龍ちゃんなんだよな」


「拓夢?」


「どう頑張っても、俺は一番にはなれない。ならなくていいって思ってる。なのに、何で、こんなに苦しいのかな」


拓夢は、そう言って手を離して振り返った。


「泣かないで」


私は、拓夢頬に右手を当てて涙を拭う。拓夢は、私の手に手を重ねて握りしめてくる。


「凛」


「うん」


「もう、最後なんだって思うと…」


「うん」


「苦しくて、息が出来ない」


拓夢の目から、涙がボロボロと流れ落ちていく。


「泣かないって決めたのにな…。今日は、ずっと笑ってようって決めたのにな…。ごめんな。うまく出来なくて」


私は、首を左右に振る。自分の頬を流れてくる涙の感触がわかる。


「私も同じだから…。拓夢と同じ気持ちだから」


拓夢は、私の頬に右手を伸ばしてゆっくりと涙を拭ってくれる。私達は、初めから出会うのが決まっていたように一瞬で恋をした。でも、それはけして許されない恋。



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