大人になれば、なる程に…

「でも、凛ちゃんの言葉がなかったら忘れてるとこだったよ」


理沙ちゃんは、そう言いながらチーズケーキを食べ進めてる。


「理沙には、優太が必要だから…。優太が、理沙をいらないって言っても…。今の理沙には優太が必要!だから、苦しくても悲しくても理沙は頑張れる」


「もし、理沙ちゃんの愛が減っちゃったら私が返済出来るかな?」


「それは、無理」


理沙ちゃんは、そう言って笑った。


「やっぱり…」


「凛ちゃんもわかってるなら、言わなくていいよね」


「うん」


愛の種類が違うからなのは、わかってる。私が、返済しても理沙ちゃんのお金は増えないんだよね。


「でも、そう言ってくれて嬉しいよ!あっ、別れるなら優太からキッチリ返済してもらうから」


「そうなの?」


「そうそう!だって、ボランティアじゃないんだから」


そう言って、理沙ちゃんはニコニコ笑っていた。私も龍ちゃんに返済しなきゃいけないね。


「愛は、お金じゃ買えないって言うけど。まさか、愛がお金だとは思わなかった」


「そうだね。無償の愛なんて幻想じゃない?凛ちゃんは、わかんないけど…。理沙の友達は、恋人に何をもらったかで競い合ってたよ。金額が高ければ、愛されてるってね」


「私は、そういうのは、なかった…」


「そっかー。目に見えないものを見えるようにしようと思ったら、結局お金になるんだよね」


「そうかもしれないね」


私は、理沙ちゃんを見つめながら頷いていた。本当に、無償の愛なんてないのかもしれない。


「仕方ないよね。だって、理沙達は、小さな頃からお金を払って何かを買ってるわけでしょ。だから、それが体にしみついていくわけじゃない。本当の愛なんて知らないじゃない。何かをもらうには、それに見合ったお金を払えって教えられてるんだから…」


「本当の愛って何なのかなー」


私は、珈琲を飲む。


「わからないよね。そんなの死ぬまでわからないよ。だから、みんな恋をするんでしょ?」


理沙ちゃんの言葉に頷いていた。


「たくむんが、凛ちゃんを愛してるのだって本当だし。凛ちゃんが旦那さんとたくむんを愛してるのも本当。でも、その愛がどれかなんてわからないでしょ?赤ちゃんの時みたいに、ただ真っ直ぐに好きだけじゃないから…。大人になったら、欲と愛が同じでしょ?」


「そうだね。好き、愛してる、抱きたい、キスしたい、抱き締められたい…。それは、全部セットだもんね」


私の言葉に理沙ちゃんは、頷いてる。


「その時点で、無償の愛ではないよね」


そう言って、最後のチーズケーキを口に運んだ。大人になればなる程、無償なんてなくなっていくのかもしれない。愛するかわりに何かを差し出してとお願いするようになっていってるのかもしれない。自分では、気づいていないだけで…。

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