最後の日に…【カクヨム版】
「拓夢…」
「最後に、俺にもしてよ」
「うん」
とろりと溶けた表情をしているのが暗くてもわかる。
「頭洗ったりしなきゃ!電気つけないと無理だよな!俺、目つぶってようか?」
凛は、俺の手を握りしめた。
「こんな体だけど、覚えていてくれる?」
その言葉に、俺は凛の手を強く握りしめる。
「電気つけて」
「わかった」
俺は、湯船からあがって電気をパチリとつけた。俺が、湯船に戻ると凛は湯船から上がった。引き締まってるわけじゃなくて、ムチッとしている。でも、その感じが俺は、堪らなく好きだった。
「あんまり見ないで、おばさん体型だから恥ずかしい」
「俺は、それが好きだよ」
「若い人の細い感じがいいに決まってるよ」
「それは、好みの問題だよね」
俺は、凛が風呂椅子に腰かけるのを見つめていた。
「拓夢は、美紗さんと付き合ってたんでしょ?彼女は、スタイルよかったよ」
「スタイルなんか気にした事はないかな!俺は好きになった人がタイプだから…。太ってようが痩せてようが気にしないけど」
そう言った俺を凛はジッと見つめてくる。
「じゃあ、私が100キロでも愛せる?」
「愛せる」
「嘘だよ!100キロだよ!今より40うんキロ重いんだよ」
「凛は、今、55キロ以上はあるって事だなー」
「体重の話なんかしてない!!」
凛は、そう言って頬を膨らませてる。
「100キロの話してなかった?」
「そうだけど…」
「風邪ひくよ!髪洗わないと」
俺は、そう言ってシャワーの蛇口を捻る。
「100キロだよ?」
「だから、何?」
「本当に愛せるの?」
「あのね!俺は、凛が100キロでも愛してるよ!出会ったあの日にそうだったとしても、故意をしていたよ」
俺は、凛の髪をシャワーで濡らす。
「人は、見た目が全てでしょ?私が、100キロだったら、拓夢は私に興味をもたないよ」
俺は、シャンプーを手に取って軽く泡立ててから凛の髪につける。
「実際、凛が100キロじゃないから想像は出来ない。でもね、少なくとも俺は見た目が全てだとは思わない。話をして、興味を持つか持たないか…。俺はね、言葉を大事にしてる」
そう言って、凛の髪を優しく流した。
「言葉?」
リンスをとって、凛の髪につける。
「そう!その人が発する言葉に惹かれるか惹かれないか…。出会って、少し会話を交わしただけでわかるんだ。だから、俺は俺に興味を持って近づいてくる人とは必ずコミニュケーションをとる。言葉や話し方や温度…。それを受け取って、付き合えるか、付き合えないかを俺は決めてるんだ」
俺は、凛の髪を丁寧に流してあげる。
「温度って何?」
凛は、そう言って俺を見つめる。
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