頑張りますから
「俺、先輩の変わりに頑張りますから」
外回りを終えて帰る車の中で、溝口はそう言っていた。
「よろしくな」
「はい、勿論です」
「溝口なら、俺も安心だよ」
「任せて下さい!明日は、あのパンケーキ屋さんですね」
「そうだな」
俺と溝口は、会社に戻って帰宅をした。疲れたー。引き継ぎ作業は、思っていたより疲れる。俺は、駅から電車に乗ると家のある駅で降りる。
いつもより、帰る足取りが軽い。だって、今日は凛がいるから…。今にも飛んでしまいたくなる気持ちを抑えながら帰宅した。
ガチャ…。
「ただいまー」
「お帰り」
キッチンから、声が聞こえる。俺は、急いで靴を脱いで上がる。
「ただいま」
「お帰り」
そのまま、凛を抱き締める。
「どうしたの?」
「別に、たいした事じゃない」
ただ、凛がいるだけで嬉しくて堪らなかった。
「火使ってるから、危ないよ」
「今日は、何?」
「シチュー」
「着替えてくる」
俺は、凛から離れてスーツをかけに行く。ポケットから、スマホを取り出した。あの、嫌がらせメッセージの相手からの返信は来てなかった。美紗じゃないのか?俺は、部屋着に着替えてから凛の元に戻った。
「もう、出きるからね」
「ありがとう」
俺は、キッチンで動く凛を見ながら冷蔵庫からビールを取り出す。
「今日は、何してた?」
「トレー買いに行って、掃除して、洗濯してたよ。椅子の上に洗濯物あるから」
「ありがとう」
凛が家にいるのが、嬉しくて堪らない。俺は、凛に近づいた。
「何?」
「抱き締めていい?」
「さっきしたよね?」
「もう一回に、決まってるだろ」
俺は、凛をギューって抱き締める。
「もう!!お帰り」
凛は、そう言って背中に手を回してくれる。
「ただいま」
ただ、これだけで幸せだった。
「ご飯出来たから、座ってて」
「はい」
俺は、ビールを取り出してグラスを二つ持ってダイニングテーブルに持っていって椅子に座る。隣の椅子を見ると、凛が洗濯物を畳んでおいてくれている。
「お待たせ」
凛は淡いグリーンのトレーにシチューとご飯とサラダをのせてやってきた。
「二回あればいけるから、便利だね」
ニコニコしながら、お皿を並べてくれる。
「よかったな」
「うん。凄くよかった」
そう言って、キッチンに戻ってスプーンとフォークと凛のお手製のドレッシングとお茶が運ばれてきた。
「食べよう」
「うん」
『いただきます』
俺と凛は、向かい合って食べ始める。幸せって、きっとこういう事を言うんだよな…。俺は、ドレッシングをかけてサラダをパリパリと食べながら凛を見つめていた。
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