オムライス屋さん
「昼御飯ぐらい、たまには外で食べないか?」
「いいね!何食べる?」
「ここに来たら、オムライスだよな」
「あー、下にあるやつだよね」
「有名なオムライス専門店だろ?」
「食べて帰ろう」
「帰り道、お肉屋さん寄って、高い肉買おう」
「何で?」
龍ちゃんは、私の手を握りしめる。
「出来ない事を探すより、出来る事を見つけたいんだ」
「それ、さっきの充の台詞じゃんか」
「ハハ、ばれた?でも、俺もそう思ったよ!二人で生きていく為の充の言葉」
「そうだね」
龍ちゃんは、そう言いながら笑ってる。手を引かれてオムライス専門店にやってきた。家族連れが並んでる。名前を記入すると龍ちゃんは、すぐにスマホを見せてきた。
「ねー、見てこれ」
「どれ?」
「これ」
【嫌なら、帰る?】
私は、首を横に振った。
龍ちゃんは、私の手を握りしめてくれる。惨めだって、昔なら思ってた。でも、今は違う。拓夢と過ごした僅かな時間のお陰で、私はそう思わなかった。
「何食べる?」
「チーズオムライス」
「好きだねー」
「凛は?」
「私は、ハーフがいいなー」
「どうせなら、ハンバーグのってるのにしたら?」
「龍ちゃんは、チキンチーズでしょ?」
「正解」
私達は、二人だから少しだけ余裕がある。だから、日替わりランチじゃないのを食べれる。それは、少しだけ嬉しい。
「皆月さん、二名様」
「はい」
名前を呼ばれて、店内に入る。
「チキンチーズオムライスが一つとハンバーグオムライスのハーフハーフが一つでよろしいですか?」
「はい」
「少々お待ち下さい」
店員さんが、いなくなった。ハーフハーフとは、ケチャップオムライス半分とデミグラスオムライス半分がお皿にのっている。デミグラスオムライス側にハンバーグがのってるのだ。
「久々だよなー!いつぶりだっけ?」
「結婚して、三年ぐらいはよく来たよね」
「そうだなー。あれからは、いいもの食べれるようになったからなー」
龍ちゃんは、そう言って小声で話した。いいものを食べれるようになったというか…。外食するなら、個室か家族連れの少ないお店を選んだ結果、いいものを食べる事になっただけ…。でも、言い換えればそのお陰でいいものを食べれてるんだ。
「凛、いつかそこにあるものが抜け落ちたらいいな」
龍ちゃんは、そう言って自分の胸を撫でていた。
「そうだね」
家族連れを見る度に疼く胸の奥。妊婦さんを見る度にヒリヒリとする心の奥底。いつか、抜け落ちてくれるかな?
「お待たせしました。チキンチーズオムライスの方?」
「はい」
「ハンバーグオムライスのハーフハーフになります。ご注文は、以上でよろしかったでしょうか?」
「はい」
「ごゆっくりどうぞ」
モヤモヤやザワザワを書き消すようにオムライスがやってきた。
『いただきます』
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