朝御飯と出発

「にがっ」


「目玉焼き、焦げた」


龍ちゃんは、私の言葉にそう言った。


「後、味噌汁濃いから」


言われる前に言い訳をする。


「それから、ウインナーも苦い」


言われる前に、そう言った。


私は、笑ってしまった。


「いちいち言わなくてもいいよ」


「だって、にが!って言うだろ?」


「言うだろうねー」


「だから、先に言っといた」


「そっか!」


「凛、あのさ、人間って弱いから支えて欲しくなるんだよな!でもさ、一人で生きれる人って凄いよなー。それと、子供いない人も強いと思うよ!だから、俺達も強いな」


「イケメンみたいに言わなくていいから」


私は、龍ちゃんに突っ込んだ。龍ちゃんは、ニコニコしながらご飯を食べてる。弱いか強いかは、わからない。でも、私はゆきゆきコンビのように誰かを叩きたくはない。辛い想いを抱えてる人を槍でさすような人間にはなりたくない。


「ケチャップかけたら、マシかも!はい」


「ありがとう」


私と龍ちゃんは、朝御飯を食べる。


「凛」


「何?」


「明日は、何する?」


明日……。


「まだ、考えてない」


「そっか!じゃあ、映画行く用意しようか」


「うん」


『ごちそうさまでした』


私と龍ちゃんは、ご飯を食べ終わった。シンクにお皿を置いた。


「昨日、コップ片付けてくれてありがとう」


「あー、全然。凛が、怪我したら大変だから」


「ごめんね。忘れてた」


「いいよ!気づいた方がやればさ」


そう言って、龍ちゃんはお皿を洗ってくれてる。気づいた方がやるって方式にいつの間にか変わった。専業主婦なら、家事はやって当たり前!そんな言葉を龍ちゃんは、私に一度も言った事はなかった。


「凛、用意して行こう」


「うん」


龍ちゃんは、お皿を洗い終わった。私と龍ちゃんは、寝室にあるクローゼットから服を取り出しに行く。


「何着てくの?」


「これかな?」


「化粧するだろ?待ってる」


「うん!軽くね」


私は、軽く化粧をした。ふんわりとした印象になるスカートを履く。キャミソールと七分袖のカーディガンを着る。龍ちゃんは、くるぶし丈のパンツとシャツを着ている。


「めっちゃ綺麗だよ」


「褒めても何も出ないから」


「そう!飴ぐらいくれたらいいのに」


「まこさんは、飴くれた?」


「おばちゃんじゃないからくれないよ!行こうか」


「うん」


龍ちゃんと映画に行くのは、久しぶりだった。


「シートベルトしてよ」


「わかってる」


月に数回しか乗らない軽自動車に乗り込んだ。私が、子連れを見たくないって気づいた龍ちゃんが買ってきた車。電車は、子供連れを見る確率が多いからって言って買ってきた。

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