鳴ってるよ

私は、ビールを持って、龍ちゃんの所に戻ってきた。


「何か、今、凛のスマホ鳴ってたよ」


「えっ、誰かな?」


私は、龍ちゃんにビールを差し出した。


「ありがとう」


龍ちゃんは、手酌でビールを注いでいた。


「ごめん」


「いいって、電話してきな」


私は、スマホを見つめる。着信は、理沙ちゃんからだった。


「ちょっと、向こうでかけてくるね」


「うん」


龍ちゃんは、私に手を振って、ビールを飲んで餃子を食べている。私は、寝室に行って電話を鳴らす。


プルルー


『もしもし、凛ちゃん』


「うん」


『あのさ、今から会える?』


「えっ?今から?どうして?」


『たくむんが、心配してて!見てきてって、優太に頼まれたんだよねー。だけど、その感じなら難しいよね』


「夫がいるから…。でも、心配してるなら、会うよ!理沙ちゃんに…」


『ごめんね、すぐすむから!駅で待ってるね』


「わかった」


私は、電話を切った。リビングに向かう。龍ちゃんは、まだ餃子を食べていた。


「あのね」


「うん」


「理沙ちゃんって、友達が出来て」


「うん」


「ちょっと彼氏と喧嘩しちゃったから、話聞いて欲しいって」


「電話じゃ駄目な感じ?」


「うん」


「行っておいで!俺、ご飯食べて、ドラマ見とくから」


「ごめんね。ご飯の途中に!もし、疑ってるなら電話したまま行く?」


龍ちゃんは、私を見てハハハって笑ってくれる。


「別に疑ってなんかないよ!だから、行っておいでよ。餃子は、冷めるだろうけどね」


「ごめんね。せっかく帰ってきたばっかりなのに…」


「凛は、謝ってばっかりだな!気にしてないから、行きな!ほら、ちょっと夜は寒いから!その子、風邪引いちゃうよ」


「ありがとう。行ってくるね」


私は、龍ちゃんに頭を下げて寝室に向かった。クローゼットから、服を取り出して着替える。龍ちゃんは、一人残されて何をするのかな?何を思うのかな?私は、薄手の長袖を羽織る。小さなバックを手にとって、またリビングに戻る。お財布とスマホを鞄に入れる。


「何かいる?駅まで、行くから」


「別にいらないかな」


「じゃあ、何か必要なものが見つかったら電話してね」


「わかった!行ってらっしゃい」


「行ってきます」


「気をつけてな」


龍ちゃんは、ニコニコと笑って手を振ってくれていた。私は、玄関で靴を履いて外に出る。雨は、上がってるけど…。寒い。理沙ちゃん、風邪引いちゃう。鍵を閉めて、早歩きで駅に向かう。

歩きながら考えていた。坂東さんが、渡したチラシじゃない方…。あの番号にかけたら、誰に繋がるのだろうか?


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