玩具と最後の日々

卒業式の日、最後にとあの公園に呼ばれた。


「凛、終らしてやるよ」


「本当に…」


「俺、松島と付き合うから」


「えっ?」


松島まつしまあかりは、同じ学年の女の子だった。


「セフレは、切らなきゃだろ?」


セフレ……。その言葉に、まだ胸を締め付けられる自分に驚いていた。


「凛の体、めっちゃよかったからなー。正直、手放したくないけどさ!でも、松島の事大事にしたいから」


ペラペラと蓮見君が話す言葉は、私の耳にはお経みたいだった。


「だから、今日は1日楽しもうか?」


「無理」


「親に帰れないって言えよ」


「ここで、1日も無理」


「ここじゃないから」


そう言って、手を引かれて連れて来られたのはマンションだった。


「従兄弟の兄ちゃんに、彼女と卒業式の日に初めてしたいって言ったら!家貸してくれたんだよ」


「そうなの」


「今日と明日いないから、貸してやるって!だから、凛。喜べよ」


「う、嬉しいよ」


うまく笑えない。それをわかって、蓮見君は私の頬をつまんだ。


「ちゃんと笑えよ!ほら、言えって、私は、信吾の玩具です」


「私は、信吾の玩具です」


「最後に、1日出来るなんて嬉しいです」


「最後に1日出来るなんて嬉しいです」


涙は、流しちゃ駄目。


「そうだろ?凛。いい子だね」


ジャラジャラ…


「何、これ?」


「これが、首輪だろ!で、リードに!これは、玩具だ」


頭の中が、真っ白になる。


「俺の従兄弟がね!貸してくれたの!面白いだろ?」


「ちょ、ちょっと待って」


私は、頭を抱えてうずくまる。恥ずかしい言葉や学校でもさせられて、屋外でもさせられ続けて…。今、私は、何をさせられようとしてるの…。


「どうせなら、全部使ってみたいじゃん」


「こ、これを…?」


「そう!だって、玩具にしか出来ないだろ?」


そう言って、笑う蓮見君は、もう私が好きなひとではなかった。私は、よくわからない物を使われて、得体の知れない快楽を感じさせられ続けた。


「全然、楽しくなかったね」


気を失ったように眠っていた私の顔を覗き込んで蓮見君は言った。


「凛は、楽しかった?」


私は、首を左右に振った。


「そうだよねー。俺も、セックスはノーマルがいいと思ったよ!よかったね!気づけて」


ニコニコ笑った顔が、私が恋した蓮見信吾の顔で泣いてしまった。


「泣かないで、凛。まだ、時間はタップリあるから」


「いや、これ以上されたら死んじゃう」


「死ぬなら、ラッキーじゃん。気持ちよくて死ねるなんて!凛が望んでた事だろ?」


「そんなの、望んでない」


「嘘だよ!凛の顔はいつも快楽を欲していたよ」


その言葉に、私は、私を軽蔑した。

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