17歳のあの日

「蓮見君」


「はい」


「あの、私と水族館に行きませんか?クリスマスイブなんですが…」


「デートって事?」


「そ、そんな言い方は、私には勿体ないと言うか…」


「凛ちゃんって呼ばれてるよね?俺もそう呼んでいい?」


「は、はい!勿論です」


「ハハハ、いいよ!水族館行こう!クリスマスイブに…」


「や、やったー」


「喜んでくれて嬉しいよ!凛ちゃん」


「じゃあ、11時に待ち合わせしませんか?お昼ご飯食べたいです」


「いいよ!それと、敬語じゃなくていいから」


「は、はい」


蓮見君は、隣のクラスだった。見つけて誘うの苦労した。私は、入学式で蓮見君を見つけてから気になっていた。人生で一番、純粋だったあの頃。携帯番号を交換した。まだ、ガラゲーの時代。


私は、蓮見君と別れて歩き出した。


「凛ちゃーん」


「はい」


私の名前を呼んだのは、黒沢麻子くろさわあさこ。男を取っ替え引っ替えするって有名な女の子でさせ子ちゃんと私の友人は呼んでいる。そして彼女を便所べんじょと呼んでいる男子と女子が沢山いるのには驚いた。

グループが違うのに、麻子ちゃんは私を気に入ってくれていた。


「凛ちゃん、明日暇?」


「えっ?明日」


「12月23日!」


「暇か暇じゃないかと言われたら…。予定はないかな」


「よかったー。クリスマスパーティーしよう!」


「えっ?」


「彼氏と彼氏の友達とするんだけどね!麻子、友達呼べって言われたの!だけど、いないじゃない!凛ちゃんしかいないの…。だから、来て!凛ちゃん、お願い」


そう言われると私は、断れなかった。それに、蓮見君との約束は24日だから…。別にいいかなとも思える。


「わかった」


「ありがとう!凛ちゃん、大好き」


そう言って、麻子ちゃんはニコニコ笑ってくれた。そして、私は次の日の昼過ぎに麻子ちゃんとクリスマスパーティーをしに行った。行き道で、彼が大学生なのを聞いた。


「メリークリスマス」


そう言って、注がれたオレンジジュースを飲む。


「麻子ー」


「凛ちゃんがいるんだから、駄目だよ」


一時間程して、酔っぱらった麻子ちゃんの彼氏は麻子ちゃんにくっつき始める。


「いいだろ?」


そう言って、胸を触ったり足元に手をやっている。私は、見ないようにする。


「もう、駄目だって」


「いいだろ?麻子」


「凛ちゃん、ジュース!はい」


「ありがとうございます」


彼は、上野雄二うえのゆうじさん。麻子ちゃんの彼の友達だった。私は、渡されたジュースを飲む。


「いつもだから、麻子ちゃんと健二は…」


「いつも…」


麻子ちゃんの彼は二宮健二にのみやけんじって名前だった。


「気にしない、気にしない」


そう言って、上野さんは笑ってくれる。

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