三分間の電話…

『凛、何か嫌なもの見た?』


「雪がね…」


その一言で、龍ちゃんは全て気付いた。


『生きてる意味は、あるよ!俺ね、凛といると凄い楽しいよ。これに、子供何かいたら死ぬかも!幸せすぎて、俺死ぬわ』


「何、それ?」


『だから、凛が悪いんじゃないから!俺が、幸せすぎて死んじゃうから神様が作らせないんだな!長生きしたいって、俺が思ってるから』


「龍ちゃん」


『だから、凛は何も悪くないよ!俺のね、ワガママなんだよ!ごめんね!巻き込んじゃって』


「違う、私なの。私が…」


龍ちゃんは、小さく「ヤバッ」て言った後でこう言った。


『まこにね、怒られたんだわ!さっき!俺ね、まだ見ぬ赤ちゃんより。凛が大切だわ!凛と生きていきたいんだ。凛が死んだら嫌だ。耐えられない。だから、二人で生きて行ってくれないかな?俺は、凛に何が起きてるのか…。凛が何を大切にしてるかわからない事の方が多い。だけど、それが凛にとって大切な時間なら…。俺は、見守るしかないから…』


その言葉に、私は龍ちゃんが何かに気付いてる事をハッキリと感じた。それでも、龍ちゃんは私を突き放さないのがわかった。


「龍ちゃん、私。赤ちゃんが欲しい。諦めたくなかった。でもね、もうアラサーじゃない。命と引きかえかも知れないんだよね。そう考えたら、私欲しくない気持ちが生まれてきてる」


『うん』


「だから、赤ちゃん来ないんだよ。私のせいだよ」


『凛、違うよ!俺、もし凛が死んで赤ちゃんだけ残ったらって考えたら嬉しくない!可愛がれない!俺は、そんな人間だって気付いちゃったんだ』


「龍ちゃん」


『凛が死んじゃうなら、子供いらない。俺は、凛しかいらない。お爺ちゃんとお婆ちゃんになっても、凛といたい。あの、箱庭でお茶を飲みたいね』


「うん」


『あー、ごめん。時間だわ!帰ったら、ちゃんと話聞くから…。もしも』


「うん」


『もしも、今の凛を』


【せんぱーい】


「もしも?」


『ごめん。呼ばれた』


「うん」


『じゃあな』


「頑張って」


『一人でいたくないなら…。あー、ありがとう!じゃあ』


プー、プー


龍ちゃんが何を言いたかったのかわかった。


【もしも、今の凛を支えてくれる人がいて一人でいたくないなら、行けばいいんだよ】


その言葉を躊躇ったのがわかる。龍ちゃんは、私が拓夢に抱かれてるのに気付いてる。不倫してるのに、気付いてる。それでも、いらないって言わない。龍ちゃんは、世界で一番優しい人。


「いい顔するんだね」


私は、その声に顔をあげる。


「電話終わったの?」


「うん、ついさっき」


そう言って、凛君が隣に座った。

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