拓夢の家…

薄化粧をして、私は家を出た。九時半を回った所だから、十時過ぎには拓夢の家につくはずだ。本当は、おしゃれをしたいけれどあんまりおしゃれにならないようにする。Tシャツにふわふわのロングスカートに低めのヒールをチョイスした。そう、今から買い物に行きますよってぐらいの洋服。


「おはようございます。皆月さん」


「おはようございます」


やっぱり、近所の人に会ってしまった。でも、気にせず行ってしまった。少しだけ、ドキドキした。ポケットに入れたあれを見抜かれてる気がした。気にせず歩くけど、電車に乗っても、降りてから歩いても、ずっとあれが気になっていた。少し刺激的だった。


何とか拓夢の家についてインターホンを鳴らした。


ピンポーン


ガチャと鍵が開いて、現れた拓夢はシャツにズボンだけど、ボサボサの髪型だった。きっと、寝てたのだと思う。拓夢の家にあがって、言葉を交わす。彼女が大切な存在なら…。私との事は、もう終わらせていいよって言おうと思ったけど…。全部言う前に、拓夢は大きな声を出した。その後、拓夢の手が小刻みに震えてるのが見える。やっぱり、何かあったんだと思った。拓夢の震えを止めたくて、隣に座って、手を握ろうとしたら…。「汚いから」と言われた。どうしたのだろう?拓夢にしては、何かがおかしい。「前の彼女を妊娠させてた」その言葉に私に申し訳なさを感じていたのがわかった。話し声が少し震えてる。きっと、知らなくて怖かったんだ。私は、拓夢の頬に手を当てて涙を拭った。

知らなかった事に、これ以上苦しめられて欲しくなかった。


「でも、それが全部嘘だったら?」拓夢の言葉に、頭の中に?マークが飛び交った。どうして?全部嘘?難しい難問を出されて困る。拓夢が、何かを話そうとした瞬間だった。


ピンポーン


インターホンが鳴った。勧誘だから、出ないでいいと言って話を続けようとするけど、ピンポーンとまたインターホンが鳴った。それでも、拓夢は話を続けようとするけどインターホンは何度も何度も鳴って、私はだんだんと怖くなってきた。拓夢は、インターホンに出ると言って立ち上がった。私も、ついていく。さらに、インターホンは酷く鳴り出した。拓夢は、ゆっくりとドアスコープを覗いた。「誰もいない」って言った。誰もいないのに、ここまで鳴るなら機械の不具合か何かなのだろうか?そう思った瞬間、拓夢が叫んだ。


「しっー」そう言われる。やっぱり、誰かがそこにいるのだと思った。拓夢も怖いのがわかる。私と拓夢は、玄関に座り込んだ。

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