わかっていない人…

私がどれだけ龍ちゃんを愛してるかわかっていない。もしも、私を愛しているなら私と龍ちゃんの生活を壊そうなんて考えない。もし、壊そうとするなら…。それは、ただの独占欲で恋や愛などではない。それは、ただ私を自分のものにしたいだけ。取り上げられた玩具を買ってもらえない玩具を、必死で欲しがる子供に過ぎないのだ。大人は、そんな事しない。愛してる相手の幸せを守ってあげようとする。だから、不倫は心が磨り減るのって…。昔、働いていた先輩が言ってた。自分を犠牲にして、相手の幸せを守ろうとした先輩を私はかっこいいと思った。このまま進めば、きっと拓夢が傷ついていくんだと思う。


ブー、ブー


【凛さん、お願いだから返事してよ】


若さって羨ましいけど、無知で怖い存在でもある。何をやっても、許される気がしてるのかな…。きっと、凛君は自分勝手に抱くんだろうな…。覚えたらきっと…。これがいいんだろうって、独りよがりのセックスをするんだろう。どこかで気づかない限り、ずっとずっとしていく。大人になってもしていく。体を喜ばし満たす方法だけを覚えてく。心は、置き去りにして…。


ブー、ブー


【もう一度、会って下さい】


私は、凛君にもう一度会ってどうすればいいのかがわからなくて…。返事を出せないでいた。


「寝ちゃって、ごめん」


私は、その声に慌ててスマホの電源を落としていた。


「充電切れた?」


「あっ、うん!丁度、今」


「そっか!充電してあげようか?」


「いいよ、自分で動くから」


安全で安心できて揺るがない場所がある。だから、私は拓夢に抱かれる事が出来る。立ち上がった私を龍ちゃんが抱き締めた。


「凛」


「どうしたの?」


「大丈夫だから…。いつか、戻ってきて」


「何言ってるの?」


「いや、別に…。何となくだよ!」


龍ちゃんは、そう言って私から離れてキッチンに行った。きっと、何かを感じてはいるんだと思う。長年一緒にいた勘みたいなものが働いているんだと思う。


「龍ちゃん」


「何?」


「大丈夫だから!きっと、心配してる事は起こらないよ」


そう言って笑って見せる。大丈夫、龍ちゃん以外を愛するなんて絶対にない。だけどね、今だけはね…。どうか、許して。龍ちゃんより、拓夢が私には必要なんだ。これもきっと紛れもなく愛なんだと思う。龍ちゃんとは違う愛。龍ちゃんには、抱けない愛。だから、ごめんね……。


「凛、何も心配してないよ!俺は、何も…」


私は、キッチンにいる龍ちゃんに近づいて、後ろから抱き締める。


「龍ちゃん、早く帰ってきてね」


「わかってる!ラーメン半分こする?」


「いいの?それ、明日の為に買ったんでしょ?」


「いいの、いいの!作ってやろうか?」


「うん」


こんな時間が好き!大好き!なのに、ごめんね。龍ちゃん

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