美沙を好きって言って…【カクヨム版】

美沙は、俺の頬に手を当てる。


「たっちゃん、美沙を好きって言って」


「美沙、好きだよ」


「嬉しい」


ニコニコ嬉しそうに笑ってる。心は、二度と美沙に戻ることなんてない。俺は、それをわかってる。


「ちょっと眠ったら?疲れただろう?」


「うん、ちょっと寝るね」


「わかった」


「おやすみ」


「おやすみ」


俺は、美沙にキスをした。昔、働いていた先の先輩が不倫していた。その人は、女の人でどうしても彼を落としたかった。だけど、いくら肌を重ねても彼は自分のものにならないと泣いていた。奥さんより、自分の方が絶対にうまいのにって…。テクニックは、愛を越えないよ!俺は、ベットから降りてキッチンに行く。体の快感を重ねて、体を落とした所で、愛は越えない。

コップに水が溢れる程、注いでから飲んだ。


俺は、凛を抱いてハッキリそれを感じた。そして、今日美沙として、もっとハッキリと感じた。いくら快感を与えた所で、愛は奪えない。結局、先輩も不倫相手と別れた。愛を全て奪える人間などいない。もしも、自分の方が夫や妻より勝ったと思う人間がいたとしたら…。それは、勘違いだ。ただ、相手から一時的に同情を貰えたに過ぎないのだ。それを愛されてると勘違いし、相手に対抗意識を燃やす奴がいる。俺は、そんな愚か者にはなりたくない。

だけど、美沙はきっと愚か者だ。


俺は、またコップに水を入れて飲んだ。スマホを見つめながら、凛に会いたくて堪らなかった。


俺は、昔、それだけが恋愛の全てだと勘違いしていた。体を快感で満たせば愛情など容易く手に入ると思っていた。だけど、ある時、違うと気づいた。それは、あの日自分のが使えなくなった時に気づいた。それは、恋愛の全てではないと…。だから、俺は凛に愛されない。あの子も無理だ。例え、凛をどれだけこの手に抱いて、凛の体が俺から離れないようにしても…。俺は、凛には愛されない。凛がくれるのは、同情だけだ。それをわかっていない、あの子はまだ…。きっと、それをすれば自分のものになると思ってるんだろうなー。昔、仲良かった奴がそんな話が好きだったのを俺は、思い出した。


「拓夢、うまくなったら!女の人、メロメロになるし!奪えるぜ」


興奮した友人と二人、その手の話を読み漁った。でも、今ならわかる。体の相性なんて、心の相性を越えられない。所詮、体は体でしかない。だから、あの本は嘘つきだ。もし、あれが本当なら俺は美沙を愛してるし。凛にも愛されてなくちゃおかしい。


俺は、立ち上がって冷蔵庫からビールを取り出した。


駄目だ、駄目だ。


プルルルー


プルルルー

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