まさかの…

龍ちゃんは、私の手を繋いだ。並んで歩きながらも、どこか不安を抱えていた。もし、凛君が居たらどうしたらいいのかという不安。


「ついたら、ラーメン見に行くから!凛は、何か見てなよ」


「うん」


「あっ!苺見たら?好きだろ?」


「うん」


苺が好きかどうかと聞かれたらよくわからない。苺以外の果物が苦手なだけで、それが好きになるのかはわからなかった。

龍ちゃんは、ニコニコしながら手を握りしめてる。


「久しぶりだよな!こうやって、歩くの」


「そうだね」


「これからも、ちょくちょくやらない?」


「あっ、うん。そうだね」


勘弁して欲しいとはさすがに言えなかった。年齢とか年数とか、そんなんじゃなくて…。龍ちゃんとは、何かそんなんじゃなくて…。うまく言えないけど、もうそんなんじゃないんだよ。でも、龍ちゃんがしたいならするよ!だって、私。龍ちゃんを好きだから…。


そんな事を考えてるとスーパーについた。龍ちゃんは、相変わらず手を繋いでくれていた。


「じゃあ、ラーメン見てくるから!苺、見てなよ」


「えっ!うん、わかった」


私は、その先にいる人を見つめていた。最悪だった。龍ちゃんは、手を離していなくなって…。私は、気にしないように果物売場に近づいた。


「凛さん、今の人誰ですか?」


「店員さん、どの苺が美味しいですか?」


私は、凛君の言葉を無視した。


「今の誰?旦那さんは、知ってるの?」


凛君は、やっぱり拓夢を旦那だと思っているようだった。


「苺って、赤い方がいいんですか?」


「凛さん」


私は、苺のパックを持つ手を掴まれた。


「あの人が、旦那だから…」


その言葉に、凛君の顔色が変わった。


「じゃあ、あの人は?」


「彼は、私のセフレ」


いつまでも、綺麗な人のように扱うならいっそ幻滅させてあげた方がいいと思った。


「君が見てたのは、私じゃないよ。君には、もっと、素敵な人がいる!大人はね。君には、わからない事を抱えてるんだよ。好きや嫌いだけで、動ける君とは違うの…」


私の言葉に凛君は、手を離してくれた。凛君は、苺のパックを差し出してくる。


「こっちの方が美味しいですよ」


動揺を精一杯、隠しながら接客をしてくる。でも、全部態度に出てる。


「ありがとう」


「後、よけいなものつけない方がいいです!この苺は、凄く甘いから」


凛君は、泣きそうになるのを堪えてる。凛君みたいな子供が産まれていたら私は幸せだったと思う。


「凛」


その声に、凛君は離れた場所に行った。


「何?」


「ラーメン一個しかなかったから!今、店員さんに調べてもらってる」


そう言って、龍ちゃんは私の隣に並んだ。

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