大切にしたいよ

「洗っておいでよ!凛」


「うん、シャワー借りるね」


「どうぞ」


俺は、凛がいなくなったのを見つめていた。


さっき、旦那さんと凛がいると思っただけで、俺は勝手に傷ついていた。でも、ちゃんとわかってる。いずれ、この関係が終わりを向かえる事ぐらい。赤ちゃんが産めない年齢に凛がなったら、間違いなく終わる。だって、凛が苦しんでるのは赤ちゃんが出来ないからだから…。出来ない年齢になったら、苦しむ必要ないわけだから…。

俺は、立ち上がって凛にタオルを出してあげる為に洗面所に来ていた。


「凛」


「何?」


「ちょっと入っていい?」


「それは…」


「電気消すからいい?」


「それなら、いいよ」


俺は、パチンと電気を消して入った。


「凛」


「何?」


体を洗い終わっていた凛を引き寄せて抱き締める。


「あのさ」


「うん」


「俺、凛と完全に終わるのは嫌だから」


「拓夢」


「だから、方法を本気で見つけるよ」


「そんなのいいのに…」


「見つけさせてよ!凛」


「わかった」


男だからとか女だからとか分けなくてもいい場所を見つけるから…。だから、凛。傍にいてよ!

俺は、凛をギューって抱き締めていた。


「拓夢、私悪い事してるよね」


「そうかもな、お互いに」


「でも、何でだろう?罪悪感が沸々湧き出したりしないの」


「うん」


「それよりも、夫とこのままちゃんと生活を出来るって思うだけでホッとしてる」


「うん」


「拓夢とあの日こうならなかったら、私はずっと夫と喧嘩や不毛な言い争いを繰り返していたと思うの」


「うん」


「だからね」


俺は、さらに強く凛を抱き締める。


「俺、凛の事大切にするから…。いけない事なのは、わかっている。ずっと続けられない事だってのも、わかってる。だけど、凛。この関係だけじゃなく、続けれるようにするから…。だから、そうなれるまで今の関係を続けたい」


「いつか、体の関係をなしにするって事?」


「駄目だよな!そんなの…」


「そうなれるなら、それが一番いいよね」


凛は、俺の背中に手を回して強く抱き締めてくれる。


「凛、忘れられる事!見つけよう」


「赤ちゃん?」


「うん」


「忘れられるの?」


「忘れられるよ!明後日、俺が見せてあげる」


「忘れられる方法?」


「そう!だから、明後日会えないかな?」


「わかった」


凛は、そう言って頷いてくれてるのがわかった。


「あがって、俺。ここにいるから」


そう言って俺は、両手で目を塞いだ。凛が上がる音がしてる。


「上がったから」


そう言われて、目を開ける。俺は、体の関係だけじゃなく。赤ちゃんを忘れさせてあげれる方法をひとつだけ見つけていた。


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