許して下さい【カクヨム版】

「凛、顔見せて」


「いや」


「このままがいいの?」


「うん」


「何で?」


「お願い」


泣いてるのをバレたくない。何で泣いてるのって聞かれたくない。


「わかった、もう少しだけ」


「うん」


龍ちゃんが、愛を捧げてこようとする。私は、早く終わって欲しいって考えていた。苦痛、絶望、悲しみ、繰り返し襲ってきて泣いていた。【赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃんが欲しい】頭の中を埋め尽くすこの言葉に、懺悔を繰り返した。【ごめんなさい、許して下さい。私は、駄目な人間です。だから、もう解放して下さい】繰り返し流れていく言葉…。


「凛」


「んっ」


「いい」


「うん」


やっと龍ちゃんが果ててくれた。分け与えられたのを感じる。妊活三年目までは、これが嬉しかった。愛する龍ちゃんとの愛の結晶が出来る気がして嬉しくて幸せで…。ニコニコしながら、腰まであげて…。それが、だんだん苦痛に変わった。


「凛、気持ちよかった」


「うん」


「凛、浮気してもいいから」


「えっ?」


「離婚しないって意味!浮気しても…」


「しないよ」


もうしてきたのに、平気で嘘がつけた。


「そっか」


龍ちゃんは、部屋から出て行ってくれた。私は、泣きながらベッドに横になった。


「浮気してよ、龍ちゃん」


口にだして泣いていた。世の中に、夫の浮気を願う妻がどれだけいるのだろうか…。


「お願いだから、龍ちゃん。私を抱かないで」


赤ちゃんみたいに膝を抱えて丸まった。静かに泣き続けた。龍ちゃんが、別の人とセックスしてくれたら助かる。ついでに、子供も作ってくれたらいいよ!そしたら、私。龍ちゃんとバイバイするから…。龍ちゃんのお母さんは、孫を見たいって強くは言わなくなったけど…。友達や親戚が、孫が産まれたのよーって幸せそうに話す。龍ちゃんは違うって言うけど、それが答えだよ。お母さんは、望んでるよ!治療しなくちゃ望めない、それだけでも何でって顔をされるのに…。治療すらも出来なくなりました。なんて、言えるわけないよ。ポンコツ、欠陥品、売り物なら破棄されてる。


涙を拭って、起き上がった。ご飯しよう。


洗面所に行った。ゴミを捨てて、下着をはいてルームウェアとエプロンをつける。手を洗ってキッチンに戻ると、豚肉の油が少し溶けていた。私は、気にせず肉叩きで肉を叩いた。


赤ちゃんが欲しい気持ちを消せなくて嫌になる。龍ちゃんといると望んでばかりで嫌になる。


塩コショウをして、お肉を焼いた。いつまで、この気持ちに苦しめられる?解放される日は、くるの?

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