三年前ー
「たっちゃん、美沙。もう、28歳なんだよ」
「わかってる」
俺は、4つ年上の浅井美沙乃と付き合って二年目を迎えていた。
「バンドは、いいから結婚しよ!ね、たっちゃん」
一年前から、美沙は結婚を望んでいた。
「無理だよ!俺は、まだ頑張りたいんだ」
バンドで、まだ何の結果も出せていなかった俺は、美沙の結婚話を断わった。
それから二ヶ月後ー
「たっちゃん、美沙。地元帰って、お見合いするから」
「そうなんだね。ごめん」
「バンド頑張ってね!応援してる」
「ありがとう」
美沙とは、何もかもがピッタリだった。考え方も、体も、心も…。磁石みたいに引っ付いていた。そんな相手だった。
「美沙、幸せになれよ」
「うん、バイバイ」
美沙が小さくなるまで、見送っていた。
本当は、別れたくなんかなかった。結婚は、無理でも付き合っていたかった。
それぐらい、美沙は俺にとって全てだった。
美沙と別れてから、心が半分壊れたみたいだった。何もやる気が起きなくて、それでも仕事とバンドの両立をこなしていた。
半年かかって、やっと立ち直った。その間、メンバー達が俺を励ましてくれて支えてくれていた。
一緒にいるのが当たり前だと思っていた。ずっと一緒にいるのが…。でも、違った。智は、違う世界を見ていた。
俺は、スマホを見つめていた。
「ヤバイって!」
「いきまーす」
「断ち切れない想いとか♪願いとか♪抑えきれない」
「ストップストップ」
「もっと、ドラム小さく叩ける?」
「ベースはこっからいくか
」
俺は、動画を見つめながら泣いていた。
コーヒー牛乳で、パンを無理やり流し込んだ。
あんなに楽しかった日々は、もうなかった。
動画を切った。
ご飯屋さん、探さないとな!検索をすると、みんなで行った洋食屋さんを見つけた。ここにしよう!
小さな欠片でも見つけたかった。
俺は、皆月さんに連絡をした。シャワーを浴びて用意をした。鏡で目を見たら、少しだけ腫れてる。
「はぁー。駄目だな!」
どうして、こんな風になったのかな?
俺は、シャワーからあがって服を着替えた。
今は、バンドの事はいったん忘れよう。皆月さんの事を考えよう。ドライヤーで頭を乾かした。
行くかな!家を出て歩き出す。何で、泣いてたのかな?別れ話だったのかな?
聞いてもいいのかな?
そんな事を考えてると思ったより早く待ち合わせ場所についてしまった。
皆月さんも早く来てくれていた。
俺と皆月さんは、洋食屋さんに行った。ビーフシチュー食べながら、好きな食べ物の話とか何か適当に会話を見繕った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます