第7話五色五味五法2

 4人で連れだって歩く。目的地は、中庭。


 真夏の彼ピは、まさかの同じクラスだった。名前は、明石勇太。平均身長並みの俺より頭一つ分ほど背の高く俺よりやや細身な、爽やかイケメン野郎である。言い換えれば、俺は中肉中背なのだ。



♠️

「〝筋肉弁当〟だね」

 中庭につき、シートとお弁当を広げた直後に爽やかイケメン野郎が指摘した。


(桜花が作ったお弁当がそんなださいネーミングであって、たまるか)

 俺は、そう思った。



「その通りですわ!」


 正解だったぁっつつつーーーー!!


 桜花は珍しく、心からの笑みを浮かべる。……爽やかイケメン野郎の指摘が正解だったことが嬉しいらしい。



「勇くんのうちは、新進気鋭の大手ジム。お母さんは、管理栄養士だからね。お弁当の意図にも敏感なんだよ♪」

 自慢げな顔で胸をはる真夏。


 ちなみに。真夏の胸は、ボリュームがそんなに無い。



「「へぇ……」」



「でも、勇くん。この色どり豊かな美しいお弁当に〝筋肉弁当〟というネーミングはどうかな? かなー??」


 おっ、真夏さん。いいこと言ってくれるじゃないですか!


「ごめん」

 爽やかに謝る勇くん。



「意図としては正解なので、大丈夫です。タンパク質やクエン酸、ビタミンB群やビタミンDやカルシウムなどを中心に体や骨を丈夫にすることを目的としたお弁当。〝筋肉弁当〟です!」



「いや、色どりと栄養。おそらく味も美味しそうなお弁当を作るとは、脱帽だよ♪ ボクのお弁当は、味はともかく色どりが全体的に茶色っぽいからね」

 真夏は、しょんぼりと肩を落とす。



「お料理は、【陰陽術】ですっ!」



「【陰陽術】!?」

 厨二ワードに俺はくいつく。


 他の2人は、急な話題についてこれずにポカンとしている。



「お料理を適当になさるお兄様が、くいついてきましたね」

 桜花は、苦笑する。



「適当なんだ、お兄様」


 こらこら、〝お兄様〟呼びをするでない。勇くん。



「お兄様は味覚も嗅覚も鋭くていらっしゃるので、味付けには天性のものがあります。色彩感覚も良いでしょう。……でも。切ったり、焼いたり、煮たりする技量が適当すぎて食材を活かしきれていない……いえ、食材が死んでるんですわ!」



「ぐふっ!」


 〝食材が死んでる!〟とは、辛辣。クリティカルヒットってやつだ。



「お料理とは、【陰陽五行説】の考えに基づく五色五味五法五適五感が基本なのです。どれも適当になさっては、ダメダメですっ」


 あー、お説教が始まった!


「おかんか?」



「〝おかん〟ではありません!」

 桜花は、可愛らしくむくれた。


 分かってますよ。妹ですよね?


 妹とは、すなわち、“年下のおかん”である。

小姑こじゅうとなるぬ、小おかん。



「2人は親元を離れて同居してるんだったね?」

 勇太が聞いた。


「〝新婚夫婦〟だよ♪」

 真夏がボケる。



「……まぁ!」

 桜花は、何故か赤面して自分の両頬を手でおおった。なんで??



「兄妹だっ!」

 俺は、即座につっこんだ。



♠️

 こんな感じで初めてのダブルデート(?)は、和やかにすすんだ。


 そして。俺は週末、勇太に体力テストをしてもらって、俺に適した運動メニューを組んでもらうこととなり、真夏は、桜花に料理を習うことになったのである。


 真夏曰く、


「晩御飯は、期待しておいて♪」らしい。


 というか。こいつら、週末に俺達のマンションへ泊まる気まんまんなのだが……



————————————————————

        [後書き]


 〝食材が死んでる〟は、新婚当初に嫁から言われた言葉です。


 まぁ…【陰陽術】の小説を書くまで、料理の基本に興味がなかった僕が悪いのですが……

 最近は、ちょっと料理にやる気を出しているライデンです。


 筋トレにも興味がでてきて、〝筋肉弁当〟もたまに作っていたり……。


 同情するなら、評価(フォロー、★★★、応援、文字付きレビュー)くれ!です。(苦笑)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

年子で優等生の妹から逃げたら、「婚約破棄ですか?」とデレ始めたのだが?? ライデン @Raidenasasin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ