第87話 バレた裏書と秘密

麻生史緒

  称号

    地球のダンジョンを初めて踏破した人類

    神獣の主

    精霊樹を地球に根付かせた人類

    魔術の求道者

    分解と観察と構築の王

  技能

    魔力増大  

    体力増大  

    魔術耐性  

    物理耐性  

    異常耐性  

    魔力回復  

    体力回復  

    解体    

    鑑定    

    制作    

    魔術の素養 


周川幹彦

  称号

    地球のダンジョンを初めて踏破した人類

    神獣の主

    精霊樹を地球に根付かせた人類

    魔剣『サラディード』の持ち主

    剣聖の候補者

  技能

    身体強化  

    体力増大  

    魔術耐性  

    物理耐性  

    異常耐性  

    魔力回復  

    体力回復  

    刀剣の極意

    隠密    

    気配察知  

    自然治癒  

    鍛冶


 それを見て、職員達は黙り込み、次いで、叫んだ。

「ええーっ!?」

「こんなの見た事も聞いた事も無い!」

「いや、マンガではあるけど!」

「どこから訊けばいいのかわからないけど、神獣ってなんですか。魔剣ってどうして。ダンジョンをいつの間に踏破したんですか」

 もう、何から答えればいいやら。

 僕と幹彦とチビは、支部長や幹部に囲まれて、質問攻めにあっていた。

 そこで、ある日突然地下室ができていたのを発見した事。それが知らなかったけど防空壕だと思った事と、そこに剣が放置されていておもちゃと思っていた事。子犬だと思ってチビを飼い始めた事。小枝を拾って土に突き刺して水をやっていたら根付いた事。地下室は家庭菜園に使っている事。それだけを話した。それは万が一の時にはこう話そうと、あらかじめ決めてあった事だ。

 チビは大きくなって、フェンリルとしての姿を見せていた。僕と幹彦よりも落ち着いているのではないだろうか。

 支部長と幹部達は、ある者は頭を抱え込んで俯き、ある者はソファにもたれて天井を睨みつけ、考え込んでいた。

「テレビでは危険な魔物がいると言っていたのにいなかったので、防空壕跡か何かと思っていたんです」

 言うと、支部長は重い溜め息をつきながら言った。

「情報を出さなかったのが裏目に出たか……。でも野党が、国民を脅すつもりかって与党を脅したそうだからなあ」

 そして、

「政府と協議する必要があります。あとで出頭してもらう事になるでしょう」

と重々しく言う。

 これだけは聞いておかなければと、前のめりになって確認した。

「チビはどうなりますか。実験とか解剖とか、そういう事になったりしませんか」

 もしそうなら、チビはエルゼへ逃がす。

 チビの為でもあるし、怒ってチビが本気で暴れたら大変な事になるだろうから、その人の為でもある。

「それは……まあ、ないのでは。きちんとしつけられているということであれば。

 ああ、保健所に届け出はいるか」

「大型の危険動物を個人が飼育するには檻などの施設が──」

「予防注射はどうなるのかな?」

 言い合う彼らの前で、チビは頭を足でかいて、小さくなった。

「ワン!」

 それは、「もううるさい、黙れ」と言っていたが、彼らにもなんとなく通じたようだ。 


 その日は家に帰され、後日調査員が地下室を見に来る事になった。

「どうしよう」

 僕は心配で仕方がない。

「枝はバレてもチビだけが転移できる事にすれば問題ないだろうし、ダンジョンだったって事には気付かずにいたんだし、今は危険もないし、問題ないだろう。

 あの踊る枝豆、エルゼに移植しておいてよかったぜ」

 幹彦が笑い、僕もああと思い出した。

「そうだよな。家庭菜園で魔物がいたら、問題視されるもんな」

「ほかにいないだろうな」

 チビが言い、僕と幹彦は心配になって家庭菜園を見に行った。


 調査員が地下室に来て、隅々まで地下室を見て回った。

 ちゃんとおかしなものはないか確認し、掃除もしてあるし、ダンジョンコアも拭いてある。

 精霊樹は、どうにかして政府の管理下に移植したかったようだが、チビが

「枯れるぞ」

と言えば、諦めた。

 それに精霊樹の役割も、精霊樹を目印にしての移転と免許証に出て来るような能力の鑑定なので、まあ、移転できるのが神獣であるチビだけだと言ってあるため、まあいいかと思ったらしい。

 地下室はこれまで通りに、うちの地下室という事になった。

 それらの次は、僕と幹彦の事になった。

 ほかの人は、身体強化や魔術はあっても、規模が違うらしい。それに、火も水も風もというわけにも行かないようだ。

 確かに、事故みたいなもので覚えもないが色々なスライムを倒した事によるそうだから、他の人はそういうものだろう。

 魔剣も地球上でほかには見つかっていないし、特異な探索者と言われれば、確かにそうだ。

 地球上の全探索者の一番強い部類に入っているのは確実で、できる事も桁外れだというのもそうだろう。

「だから、何か起こった時には協力をお願いします」

「はあ……」

「……ここに魔石があったはずですが。チビがどこかへ持って行ったらしいと言っても、責任者として魔石の保管に問題があったとして、立件することも可能──」

「はい、協力させていただきます」

 面倒臭いが、将来の隠居生活のためだ。




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