第6話 旅立ちの試験
「さて、試験の内容だが、実践的なものにする。これからお前には家に戻ってもらう。俺達の準備ができたら合図を出すからその後で訓練場を出て欲しい。そしてどこかに潜んでいる俺達と交戦する。今回は訓練だから片方と交戦中はもう片方は待機するからそこは安心してくれ」
「・・・わかった。とにかく不意を突かれないよう。そしてそこから戦えれるかを見るってことだな」
「そうだ。だが口で言うのは簡単だが実際そんなにうまくいくかな?それに実践ではそもそも潜んでいるかどうかなんてわからないからもっと難しいぞ」
親父の言うことは尤もである。試験用に大分簡単にしてくれているが、それすらできなければまだまだと判断されても仕方がない。あの件以降この村では特に変化はないが他の場所がどうなっているのかは分からない。最低限の自衛はできなければいけないのだ。
「じゃあ俺は訓練場に行くよ」
「おう、ゆっくり待っとき」
「さて、こちらは準備で忙しいわ」
訓練場に着いた俺は準備完了の知らせが来るまで横になった。今から緊張しても仕方ないからな。
『今感覚強化を使えばどこに仕掛けがあるのか、どこに潜んでいるのかある程度特定はできますよ』
(わかってるよ。でもこれは試験だ。それはカンニングに限りなく近いからな。やめておくよ)
『そうですか・・・』
思ったより時間かかるな、と思った頃外から合図らしき音が聞こえてくる。いよいよ試験開始だ。
この訓練場は村はずれにあるため他の人が訪れることはまずない。そのため余計な心配をする必要は無い。
(よし、いくぞ)
周囲の状況を確認して訓練場から一歩足を踏み出す・・・ここには仕掛けはないか。
(流石にそんなすぐ近くには仕掛けないか?)
一歩目が大丈夫だったこともあり、少し油断が入った二歩目を踏み出した時、地面の違和感に気付く。
『何か罠を踏んだようです。おそらく足をあげたタイミングで何かが起動するのでしょうけど』
(困ったな、俺の心理を見事に突かれたな)
じっと、次の一手を考える。だがもう起動が確定している罠を今更どうこうできるわけもなく、時間だけが過ぎていく。
(ええい、いざとなれば感覚強化を使うからどうにでもなるだろ)
覚悟を決め、足を地面から離す。何か起こると身構えたが何も起きない。どういうことだ?
『これはやられましたね。罠にかかったと思わせてこちらを消耗させただけのようです』
(性格悪いよ。でも敵地に足を踏み入れるってそういうことだもんな)
ここら一帯罠だらけだ。一歩一歩何か起こるのではないかと相当に気を遣う。
(それにしても全く何もないな。時間も無かったし言う程本命の罠は無いのか?)
『貴方がそう思うのを待っていると思いますよ』
(うるさい、わかってるわ)
そしてとうとう本命と思われる罠が作動する。俺を転ばそうとしてきたが、最後まで集中を切らさなかったおかげで無事に回避に成功する。
危なかった。そう思う間もなく次に着地した場所から新たな罠が作動し、次から次に俺に対して狭い来る罠。今のペースで襲われたらいつか餌食になってしまう。だったら早いうちに対策を取ったほうがいい、そう判断しすぐさま感覚強化を使用する。
『今回は周囲からの情報量が多そうですので私も協力します』
急にそんなこと言われても、と言いたくなったが確かにこれは仕方ないと割り切り、アンデレの意見も聞きながら次々に襲い来る罠に対して先手先手を取り対応を続けた。
最後の罠を無事に対処し、さっきまでとは異なり、急に静かになった周囲を見渡す。どうやら両親は近くにはいないようだ。これ以上感覚強化を使い続ける理由もないので一先ずスキルを解除する。
途端に疲労感に襲われる。思ったより長い時間罠の対応をしなければいけなかったのでまぁ仕方ないと言えば仕方ない。
『中々嫌らしい罠でしたね。貴方だけでも対処はできたかもしれませんが』
(どうかな。お前のおかげで対応に余裕ができたから後手後手に回らなかったのはある。必要な時だけ動いてくれればこれ程頼もしい存在はないんだけどな)
おっと、こいつと話している暇はない。今の罠の対処で大分派手に動いたから向こうが仕掛けてきてもおかしくはない。
(さて、ここまではお手並み拝見といった感じだったのかな)
周囲を警戒しながら両親の隠れそうな場所を探し始めたが、やはりそう簡単には姿を現してはくれない。
『こちらの居場所だけばれているというのはやりにくいですね。こちらも身を隠すのもアリでは?』
(うーむ、それも悪くないが地の理は今向こうにあるからな。隠れる場所の周辺に何もないことの確認が大変だ。そうしているうちにばれるだろうからな)
とはいえ、この状況が続くのはあまりよろしくはない。何か良い手は無いのか・・・
(さっきの疲労も大分回復してきたことだし感覚強化を使って位置を探れるかやってみるか?)
『悪くないかもしれません。大分時間も経過しましたし、向こうもしびれを切らしていてもおかしくはありません』
一息ついた後、感覚強化を再び使い周囲の状況を確認する。
遠くで何かが動いているのを微かに感じ取る。両親のどちらかは分からないが確実にどちらかだ。とりあえずその方向に行くことは決まったのだが・・・
(もう一人はどこにいるのだろうか。動いていることすら囮の可能性もあるし慎重に行こう)
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