第92話 三聖姫
「皆の者、今宵は夜通し飲み続けるがいい!!乾杯!!」
『乾杯!!』
王城の大広間にて王都に暮らす貴族が集まり、その中には貴族だけではなく商人の姿もあった。彼等は火竜討伐を祝うために集まり、豪勢な料理と豪華な酒が次々と運びこまれた。
「いやはや、また勇者殿が大活躍したようですな」
「勇者殿が居ればこの国は安泰ですな」
「勇者殿のお仲間も見事な働きだったとか……」
貴族たちの話題は宴の主役である勇者の話題で持ち切りであり、彼等の中には勇者と親しい間柄を築くために同年代の子供を連れてくる者も多かった。
「いいか、何としても勇者様の機嫌を損ねてはならんぞ!?」
「は、はい父上……分かっております」
「頼んだぞ、お前ならば勇者殿のお眼鏡にかなうはず……我が伯爵家の未来はお前にかかっている」
「ええ、お任せください。勇者殿を私の魅力で虜にさせましょう」
「いいですか、貴女達……今回は勇者様とお近づきになれる絶好の機会です。必ずや我が家に招待するのですよ」
「はい、分かりましたわ!!」
「お任せください母上!!」
祝宴には子供の姿も多く、男子だけではなく女子も多かった。男子の目的は勇者とこの機会に仲を深め、ゆくゆくは男女の関係に至るのが目的だった。勇者であるルナは見た目は美少女と言っても過言ではなく、勇者とか関係なく彼女を自分の物にしたいと考える輩も多い。
その一方で女子の方は勇者であるルナと仲を深めれば様々な恩恵を得られるため、彼女と距離を縮めるために贈り物を用意していた。当然だが男子も同じように彼女への贈り物を用意しており、勇者が訪れるのを待ちわびる。
「相変わらず凄い人気ですわね。ルナさんは……」
「ああ、羨ましい限りだ」
「本当にそう思ってのか?」
宴の席には既にルナと共に行動を行う三人の少女の姿もあった。彼女達は国内から厳選された腕利きの剣士、魔術師、格闘家であり、三人ともルナに負けず劣らずの美少女揃いだった。
魔術師の少女はエルフであり、美しい金髪の髪の毛を縦ロールにまとめていた。見た目は若々しいが、実年齢は実はこの場の誰よりも上であり、国王とも古い付き合いである。
剣士の少女は銀髪の髪の毛を肩の部分まで伸ばしており、無駄な肉が一切ない細身、それでいながら凛々しい顔立ち故に実年齢よりも上に見られる事が多い。彼女は元は傭兵で剣の腕ならば彼女に勝るものはこの国にはいないとまで言われている。
格闘家の少女は特徴的な赤髪を肩甲骨の部分まで伸ばしており、ルナを含めた4人の中で最も身長が大きく、肉付きも良い。胸の大きさは祝宴会に集まった女性の誰よりも大きく、勇者目的で訪れたはずの男性陣の目を釘付けにしていた。
「ドリス、調子はどうだ?火竜との戦いでは大分無理をしただろう」
「平気ですわ。もう魔力は完全に戻りましたし、それに私よりも無茶をしたのは御二人でしょう?」
「ははは、あの時は死ぬかと思ったよ。なあ、リンダ?」
「……気やすく肩に手をかけるな、ヒイロ」
「別にいいじゃないかい、あたしら親友だろ?」
「あらあら、少し前まではよく喧嘩してたのに大分仲良くなりましたわね」
魔術師の少女(実年齢は少女ではないが)はドリス、剣士の少女はリンダ、格闘家の少女はヒイロというらしく、彼女達の周りには貴族だろうと迂闊には近づけない。
「か、彼女達が勇者様と行動を共にする三聖姫か……」
「三聖姫?」
「馬鹿、お前知らないのか?彼女達はそれぞれが勇者様にも勝る能力を持っているんだ。ドリス殿は魔法、リンダ殿は剣技、ヒイロ殿は格闘技を勇者様に教えている立場でもあるんだ」
「と、と言う事は勇者様の師と言う事か!?」
「そうだ。そんな彼女達をいつしか人々は三聖姫と呼ぶようになった」
ルナと行動を共にする3人はそれぞれの分野で彼女に勝っているため、国側としても勇者の指導は彼女達に任せている。だからこそ貴族でなかろうと彼女達は重要な立場についてるため、ぞんざいな扱いはできない。
三人とも常人とはかけ離れた雰囲気を放ち、彼女達の見た目に惹かれた男性陣も迂闊には近づけない。現時点では彼女達は勇者の次に重要な存在であり、正に将来の英雄といっても過言ではない。
「やあやあ、相変わらず仲が良さそうだね」
「あら、王女様……お久しぶりですわね」
「……またあんたか」
「よう、久しぶりだね」
そんな彼女達の元に一人だけ全く臆さずに近付く人物が存在した。その人物はこの国の王女にして王位継承権を持つ人物だった。
三人の前に現れたのは美しい黒髪の少女であり、年齢はルナよりも2、3才年上ぐらいの女性だった。身長も高く、凛々しい顔立ちをしているので大人の女性と間違われる事も多いが、彼女こそがこの国の第一王女にして次期国王に最も相応しいと人々に噂されている。
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