第80話 火属性の耐性
「あ、あり得ない……何故だ、何故生きている!?」
「くそっ、本当に死ぬかと思った……」
「いや、普通は死ぬわよ!?」
コウはヒヒの放った炎の精霊魔法を受けたにも関わらず、衣服が焦げた程度で身体の方は特に怪我はなかった。炎に飲み込まれた時は全身が熱く感じたが、実際の彼の身体には火傷の跡すら残っていない。
いったい何が起きているのか誰も理解できず、攻撃を受けたコウ自身も自分の肉体が火傷すら負っていない事に不思議に思う。しかし、ここでラナはコウの右手に刻まれた魔術痕を見て驚きの声を上げる。
「コウ君!!貴方、もしかして火属性の魔法が使えるの!?」
「え?あ、はい……一応は」
「ま、まさか!?貴様、火属性の魔法の使い手だったのか!!」
「えっ!?ど、どうしたの皆?」
コウが火属性の魔法の使い手だと知るとヒヒは悔し気な表情を浮かべ、一方でルルはラナとヒヒがどうして驚いているのか分からなかった。しかし、リナの方が合点がいったようにコウに告げた。
「そ、そういう事だったのね!!コウ君、貴方は火属性の魔法の使い手だから耐性があるのよ!!」
「た、耐性?」
「魔法使いは自分の適性属性の魔法の耐性が芽生えるのよ!!だからコウ君は火属性の魔法に対して強い肉体を持っているのよ!!」
リナによればコウは火属性の魔法を覚えた結果、肉体が火属性の魔法に対して強い耐性が芽生え、そのお陰でコウは先ほどのヒヒの精霊魔法を受けても無傷で耐える事ができた。
偶然にもコウがヒヒと同じ属性の魔法の使い手だったお陰で命拾いし、もしも彼が火属性ではなく他の属性の魔法の使い手だったとしたら焼死体と化していた可能性が高い。
(そういえばさっき燃やされた時は熱くは感じたけど、今思えば大して事はなかったな……何時の間にか俺の身体は炎にも強くなっていたのか)
知らない間にコウは自分の肉体に火属性の魔法耐性が芽生えている事を知り、火属性の魔術痕を刻んだ影響で「火球」だけではなく、肉体も火に強い身体に変わっていた事を知る。しかし、ヒヒは自分の魔法を受けて生き延びたコウに対して怒りを抱く。
「ふ、ふざけるな!!人間如きがこの僕の魔法を耐えただと……そんな事、あってたまるか!!」
「……僕、ね。さっきまで自分の事を私とか言ってたくせに、格好つけてたのか?」
「何だと!?」
「コウ君!?挑発したら駄目よ!!いくら火属性の魔法耐性があるからって無茶をしたら死ぬわよ!!」
魔法耐性は魔法を無効化するのではなく、あくまでも魔法に対して耐性を得られるだけに過ぎない。だから耐性の限界を超えた攻撃を受ければ無事では済まず、ヒヒは今度こそコウを焼き尽くすために先ほどよりも火力を増して攻撃を繰り出す。
「焼け死ね!!」
「うわっ!?」
「危ない、離れて!!」
ヒヒは掌を構えると今度はコウも扱う「
(やばい!?流石に今度受けたら痛いじゃ済まないぞ!!)
先ほど攻撃を受けた時もコウは肉体に火傷は負わなかったが身体が焼かれる感覚を味わい、もう二度と同じ目に遭いたくはない彼は必死にヒヒの放つ攻撃を躱す。
「ヒヒ!!もう止めなさい!!」
「死ね!!死ね!!」
「よっ、ほっ、はっ……!!」
「わあっ……コウ君、凄~い!!」
「のんきに見ている場合じゃないでしょ!!早く離れないと巻き込まれるわよ!?」
「ぷるるんっ(←退避する)」
ラナはヒヒを止めようと声をかけるが彼は聞く耳持たず、あちこち逃げ回るコウに執拗に炎塊を放つ。それを見ていたルルをリナは引っ張って行き、熱を苦手とするスラミンも急いで距離を取る。
コウはヒヒの放つ魔法を躱しながら隙を伺い、流石に彼の繰り出す魔法を受ければ今度はただで済みそうにない。そこでコウは右手に意識を集中させ、ある程度まで距離を縮めるとヒヒを挑発した。
「ほら、何処を狙ってるんだ!?俺はこっちだぞ!!」
「このっ……調子に乗るなぁっ!!」
挑発に乗ったヒヒは血走った目でコウに掌を構え、これまでで一番の大きさの炎塊を作り出す。しかし、それを待っていたコウは自らも魔力を右手に集めて火球を作り出す。
(今だっ!!)
自分の挑発に乗ってヒヒが一際大きな炎塊を作り出した瞬間、コウは
「
「なっ……ぐあああああっ!?」
『きゃあっ!?』
ヒヒの掌から生み出された炎塊に目掛けてコウは火球を投擲し、見事に的中させた。コウの火球とヒヒの炎塊が衝突した瞬間、爆炎が拡散してヒヒを吹き飛ばす。爆発の際に地面が振動し、離れていたラナ達も体勢を崩して尻餅をつく。
コウは最初からヒヒが魔法を発動させる瞬間を狙い、彼が攻撃を繰り出す前に自分の火球を衝突させて「誘爆」を引き起こすのが目的だった。狙いは見事に的中し、自分の魔法に巻き込まれる形でヒヒは派手に吹き飛ぶ。
※今のコウ君なら160キロ以上のストレートも投げれそう……
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