第67話 お仕置き
『――しゅ、しゅびませんでした……』
「もう懲りた?」
「わあっ……コウ君、つよ~いっ」
数分後、顔面を殴られ過ぎて上手く口が回らない程に晴れた盗賊三人組がコウの前で土下座を行う。結局はコウは武器を使わずとも素手だけで三人組を倒し、その様子を見ていたルルは木陰から拍手する。
コウは改めて地面に土下座した三人組の前で腕を組み、どうして
「どうしてあの女の子を連れ去ろうとした?」
「い、いやしょれは……」
「正直に答えろ!!」
「は、はひっ!!」
顔が腫れて上手くしゃべれないせいで聞き取るのに時間は掛かったが、彼等はこの森の近くにある「ゴノ」と呼ばれる街で暮らす盗賊らしく、昨日に酒場で気になる噂を耳にしたらしい。
このゴノの街の近くにある森には「
「おれたひのようなしがないとぞくは、ひとさりゃいでもしなければ生きていけないんすよ……」
「勝手な事を……お前達に攫われた人間がどんなひどい目に遭うのか分かってるのか!?」
「ひいっ!?す、すいません!!」
「で、でもおいらたちが人攫いしたのは今日が初めてで……」
「そういう問題じゃない!!」
『うひぃっ!?』
コウは三人組の言い分に怒りを抱いて拳を地面に叩きつけると、あまりの怪力に地面に亀裂が走った。コウの迫力に三人組は震え上がり、そんな彼等にコウは言い放つ。
「お前達は街に連れて帰って警備兵に突き出してやる!!いいか、逃げようとすれば次は容赦しないからな!!」
『は、はひっ!!』
「ううっ……やっぱり、お母さんの言う通り外の世界の人間は怖い人ばっかりなんだ」
話を聞いていたルルは自分が攫われて危うく奴隷商人に売られそうになったと聞いて怯えていた。そんな彼女にコウは振り返り、改めてルルが森人族なのか尋ねた。
「ルルちゃん、君は森人族だったの?」
「う、うん……そうだよ。本当は他の人には話しちゃ駄目だと言われたけど……」
ルルは長髪を掻き分けると細長い耳が露わになり、それを見たコウは驚く。人間ではあり得ない程の耳の長さ、そしてこれまでは暗闇の中にいたせいかルルの容姿はよく分からなかったが、改めて観察すると彼女の容姿は美少女と言っても過言ではない程に整っている。
金髪の髪の毛を腰の部分まで伸ばし、幼さはまだ残っているが端正に整った顔立ち、宝石のように美しい碧眼、何よりも年齢の割には大きな胸元が目立つ。彼女は14才と聞いていたが、その胸の大きさは大人顔負けだった。
(うっ……こうしてみると本当に可愛いな)
コウはルルの容姿を見て森人族の奴隷が高く売買される理由を知り、よくよく考えるとコウは同世代の女の子と仲良くなるのは初めてな気がした。コウの暮らす村は子供が少なく、そもそもコウは他の子供と違っていつも働き詰めだったので他の子供と遊ぶ機会がなかった。
(それにしても街で噂になっているのか……もしもこいつらを警備兵に突き出してもまたこの子やリナちゃんを狙う輩も現れるかもしれないな)
今回はコウが偶々連れ去られたルルを助け出したが、もしもコウがいなければ今頃はルルは攫われて街の奴隷商人に売り渡されていただろう。そう考えるとコウはルルを心配し、とりあえずはこの三人は街に連れて行く事にした。
「ごめんね、ルルちゃん。怖がらせちゃって……」
「え?なんでコウ君が謝るの?悪いのはこの人達だよ?」
「いや、でも僕も人間だから……」
「人間?あ、もしかしてさっき私が言った事を気にしてるの?ごめんね、でもそんなの関係ないよ〜コウ君は外の世界の人間だけど、優しい事は知ってるから」
コウの言葉を聞いてルルは謝罪し、彼の両手を握りしめた。そんな彼女にルルは苦笑いを浮かべ、ともかく盗賊達は自分が連れて行く事を伝える。
「ルルちゃんは家に戻ってリナちゃんの手伝いをしなよ。僕達が戻ってこないから心配してるかもしれないし……」
「あ、そうだった!!お母さんの薬を作る途中だった!!それじゃあ、私は先に戻ってるね!!」
「うん……僕はこいつらを街の警備兵に突き出すから」
「か、勘弁してくれ……」
「何か言った?」
「ひいっ!?何でもありません!?」
この期に及んで情けない声を上げる盗賊達をコウは睨みつけ、彼等をこのまま森に残すわけにはいかず、コウはルルに別れを告げて森を出ていく事にした。
「それじゃあ、僕は街に戻るね」
「うん、分かったよ。その悪い人たちを兵士さんに引き渡したら戻ってきてね〜!!」
「う、うん……」
ルルは元気よく手を振りながら自分の家に戻り、その様子をコウは手を振って見送る。彼女が見えなくなるとコウは盗賊達を持参していた縄で縛り付けて森から出るために連れて行く。
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