閑話 《その頃の勇者は……》

――イチノから遠く離れた地、国一番の規模を誇る火山に数名の少女たちが訪れていた。彼女達は火山の火口に辿り着くと、そこに待ち構える異形の生物の姿を捉えた。



「ルナ、見つけたぞ。あれが火竜だ」

「火竜……あれがこの火山の主なんだね」



火山に訪れた少女の一人は成長したルナであり、彼女はコウと再会した時よりも身長が伸びていた。髪型もポニーテールにまとめ、その手には変わった形をした刃の槍を持っていた。


勇者として日々修行を行うルナはたくましく成長し、現在は仲間と共に各地に出現した大型の魔物の討伐に対処していた。世界中で危険区域が誕生した事により、そのせいでこれまでの自然界の生態系が崩れてしまい、魔物を加えた新たな生態系が築かれようとされている。


勇者であるルナが火山に訪れた目的、それは火山に住み着いた魔物の討伐だった。この火山は元々は危険区域ではなかったのだが、ある時に火山に「火竜」と呼ばれる魔物が住み着くようになった。魔物の中でも竜種は生態系の頂点に位置し、火竜と呼ばれる種は元々は火山地帯(危険区域内)に生息する魔物だが、危険区域でもない火山に唐突に火竜が出現したという報告を受けて勇者のルナは問題の対処へ向かう。



「調べてみましたがやはりここは危険区域ではありません。それなのに火竜がこの地に訪れたのでしょうか……」

「大方、縄張り争いに負けた火竜がこの地に流れ込んできたというだけだろう」

「何だ、負け犬か。それならあたしらの敵じゃないな」

「皆、油断禁物だよ」



ルナの周りには三人の少女が存在し、それぞれが美少女と言っても過言ではない容姿の持ち主だった。彼女達はそれぞれがルナにも劣らない武術や魔法の才能を持ち合わせており、この四人が現在の王国の最強の部隊といっても過言ではない。


隊長格を務めるのは勇者であるルナだが、彼女は火竜を一目見ただけで油断ならない相手だと確信を抱く。しかし、それでも自分達ならば火竜を倒せるという絶対の自信もあり、他の三人に振り返って告げる。



「行こう!!」

「ああ!!」

「はい!!」

「おう!!」



ルナが一言だけ告げると三人は即座に返事を行い、火竜に向けて駆け出す――






――後日、国中に勇者が火竜の討伐に成功したという報告が伝わる。コウが成長しているようにルナも勇者としてさらなる高みに到達していた。

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