第47話 助けて
街道に出たコウは周囲を見渡し、彼が真っ先に目に入ったのは魔道具店だった。まだ店は開いていない時間帯だが、構わずにコウはネココを抱きかかえて見せの前に移動する。その後にスラミンも続き、店の前に辿り着くとコウは大声で呼びかけた。
「すいません!!開けてください、怪我人がいるんです!!助けてください!!」
『どなたですか?こんな時間に……』
コウは扉を何度も叩くと店の中から声が聞こえ、扉が開かれると不機嫌そうな表情を浮かべたドルトンが現れた。彼はコウの姿を見て驚いた顔を浮かべる。
「おや、貴方は昨日の……」
「あのっ!!怪我や毒を治療する魔道具は売ってますか!?この子が毒にやられたんです!!」
「ううっ……」
ネココを抱えたコウはドルトンに事情を説明する暇もなく、彼に怪我や毒を治療する効果を持つ魔道具を販売しているのかを問う。ドルトンはコウが抱えているネココを見て驚いたが、状況を理解したのか彼は店の中に招く。
「どうやら只事ではないようですな……どうぞ、中へ入って下さい」
「ありがとうございます!!」
「ぷるぷるっ!!」
「むっ!?ス、スライム!?どうして魔物がここに……」
店の中にコウが入るとスラミンも後に続き、それを見たドルトンは戸惑いながらも扉を閉めて鍵をかけた――
――店内に存在する長机の一つにネココを横たわらせ、ドルトンは彼女の傷口を確認し、刺さっている矢を抜く。本当ならば矢を抜くのは危険な行為だが、今は毒の種類を調べるために止む無く彼は矢を抜いた。
引き抜いた矢の鏃に塗られていた毒を調べるためにドルトンは調合器具を用意し、その間にコウはネココの意識を保つように彼女の手を掴む。ネココは目を閉じて苦しそうに呻き、そんな彼女を見てコウはドルトンを急かす。
「まだですか!?」
「もう少しお待ちを……」
ドルトンは植物の図鑑を取り出して毒の正体を調べ上げ、遂に判明したのか彼は商品の棚に置かれていた液体が入った瓶を取り出す。
「今から解毒薬を作り出します。その間、彼女が不安がらないように声をかけてください」
「は、はい……ネココ、絶対に助けるからな」
「ううっ……」
「ぷるぷるっ……」
時間が経過する度にネココの顔色は青くなり、そんな彼女にコウは必死に声をかける。スラミンも心配する様に彼女の顔を覗き込むが、やがてドルトンは商品棚に置かれていた瓶を組み合わせて解毒薬を調合した。
「この薬をすぐに飲ませてください。とりあえずは毒は中和されるはずです」
「は、はい!!」
言われるがままにコウはドルトンから渡された薬をネココの口元に運び込み、彼女にどうにか飲み込ませる。途中でむせて吐き出しそうになったが、無理やりに飲み込ませるとネココの身体に異変が起きる。
「はあっ、はあっ……」
「そんな……ネココ、しっかりしろ!!目を覚まさせ!!」
「落ち着いて下さい。顔色をよく見て……元に戻っているでしょう」
「ぷるんっ」
薬を飲ませてもネココが目を覚まさない事にコウは焦るが、ドルトンの言う通りに薬の効果はあったのか彼女の顔は血色を取り戻す。やがて乱れていた息も整い始め、穏やかな寝息を立てる。
「すぅっ……すぅっ……」
「……どうやら毒は完全に中和したようですな」
「よ、良かった……」
「ぷるる~んっ」
解毒に成功したと聞いてコウは安堵すると、隣でスラミンも安心したように飛び跳ねる。しかし、ドルトンは彼女の矢が刺さった左肩に視線を向け、何が起きたのかを問う。
「いったいこの子に何があったのですか?どうしてこんな怪我を……」
「あ、えっと、それは……」
ドルトンの質問にコウはどのように答えるべきか悩み、彼のお陰でネココの命は助かったため、下手に誤魔化す事はできない。仕方なく、コウはこれまでに起きた経緯を話す――
――事情を知ったドルトンは難しい表情を浮かべ、自分が助けた少女が実は盗賊に命を狙われる立場だと知り、彼女を連れてきたコウに振り返る。
「お話は分かりました。まさかこの娘があの有名な盗人少女だとは……」
「え、ネココの事を知っているんですか?」
「噂はよく耳にしております。しかし、まさか盗賊に命を狙われる程に恨まれているとは……」
「それはネココのせいじゃないんです!!悪いのは盗賊の奴らで……」
「発端はどうであれ、この娘が盗賊に命を狙われる立場である事は間違いありません。申し訳ありませんが、私では貴方達を庇う事はできません。すぐに警備兵に連絡を……」
「ま、待ってください!!」
コウは警備兵を呼び出しに向かおうとするドルトンを引き留め、彼にはネココを救ってくれた恩はあるが、このまま行かせるわけにはいかなかった。
警備兵の中には副隊長と繋がっていた兵士もいるはずであり、もしも今のネココを連れて行けば何をされるか分からない。だからこそコウはネココを連れて街を出て行く事を決めた。
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